2004-01-01から1年間の記事一覧

 君よ、栄誉に胸を張れ

ワークス贔屓人間は、なぜ「もらい泣き」などする生物なのだろう。何ともなくフツーであるはずの時でも、相手が涙を見せた途端にこちらもなぜか目頭が熱くなる──。 第27回“コカ・コーラ”(←わざとつけてみる)鈴鹿8時間耐久ロードレース。さまざまな事情によ…

 日はまた昇る

登場!とんがりRCVホンダを応援していて面白いことの一つは、その強大な開発力にまかせて頻繁に投入してくるこれ見よがしな改良型マシンを楽しめるところにある(そしてまたNSRの10年間が示しているように、時にその改良がこっぴどい失敗に終わるのも、GPド…

 青い玉

防衛機制あなたは本当にたいしたものね──というようなことを妻が言う。事故の当日、家に落ち着くともうバイク雑誌を読みふけっている僕に、半ばあきれているらしい。それなりに体を痛める事故を起こしたのに、恐怖や精神的ショックはぜんぜんないのか、とい…

 That's All Folks!

終わりの始まり事故に巻き込まれて気を失い、病院で目を覚まして「ここはいったいどこですか?」──そんなのはよく聞く話だ。しかし別に気を失っていなくたって、自分のいる病院がどこかなんて皆目見当がつかない。なにせ、救急車の中ってのは外が全く見えな…

 跳べないウサギ

シングル・ナンバーの雄姿かつて──そう、それはもう太古の昔のことのように思える──マシンのフロントカウルに輝くゼッケンは、そのライダーの前年度ランキングを表していた。しかし時代は流れ、先陣争いを繰り広げる'03ランキングトップの二人、セテ・ジベル…

 異端の魅惑

均質化するGPマシンモーターサイクルのメカニズムそのものに魅惑される類の人にとって、「コンベンショナルでない新しい構造」というのは常に興奮を誘う要素だ。それがかつて例のない手法であったり、また一見リーズナブルとは言えない手段であればあるほど…

 よくしゃべるCBR

梅雨の中休みとなれば、走っておかないわけにはいくまい。毎日夜中まで働いた甲斐あって、やっととれたぞ平日の休み。というわけで、オイルも新品の600RRを駆り出して、貸し切り状態の奥多摩へと出かけた。 前回ちょっとしたセッティングミスをしたこともあ…

 Whole Lotta Trouble

神のブレーキング「無理だ!」──テレビの画面にかじりつくほぼ全員が、まるで劇画のようにそんな危機感を共有できるのは、上空を飛ぶ中継ヘリのおかげだ。ラスト2周のストレートエンド、互いに疲弊し切ったタイヤをすべらせながらデッドヒートを繰り広げてき…

 ボローニャからの贈り物

遅れてきた封筒「ボローニャからの」とタイトルでは書いているが、実際にはボローニャではなく東京都目黒区からの贈り物だ(笑)。ある日郵便受けを開けると、ドゥカティ ジャパンから届いていたのは、もうすっかり忘れていたDucati SportClassicシリーズの…

 希望の轍

実力じゃないロッシが天に向けて指し出した一本の指に目がくぎ付けになる。目まぐるしい番狂わせを重ねた熱いレースが、トップを走行するこの天才ライダーの“神の仕草”によってあっけなく決着をつけられてしまうかに思われた──後ろではセテ・ジベルナウがや…

 死んだ峠

ライダー天国目論見を間違えた?……そんな筈はない。確かに前回、平日に休みをとって走りに来てから4日ほどしか経ってないこともあって渇望感が足らず、起床はいつもより遅れてしまった。しかし、奥多摩入りしたのがゲートオープンの30分後。いつも朝練組のバ…

 RCVのRC

余計な買い物静かな田舎町にやって来て腕をまくると、地元のちいさな玩具店をハリケーンのごとく宙に巻き上げてばらばらにしていった巨人──トイザらス。この巨大な遊園地の目まぐるしい刺激をおぼえた人々は、もはや狭くうらがなしい町の小さなおもちゃ屋に…

 イギリス帰りの男

意外な過去僕が行きつけにしている美容室は、ほとんど人の通らない裏通りにある。置いてある椅子は二脚きり、スタッフも二人という小さな店だ。英ヴィダル・サスーンで修業して帰国後この店を開いたというオーナー兼美容師は、年の頃34、5歳、なるほど腕はい…

 黄色い弾丸

最後のチャンス久しぶりに我を忘れたレースだった。気がつけばラストラップ、爆弾つきのバスの行く手に突如渋滞の車列が見えた時のように、カルロス・チェカとマックス・ビアッジの前にバックマーカーの集団が効果音つきで立ちはだかる。まるで予選開始直後…

 Safety In The Shell

強迫的セイフティ“安全”というのはある意味「中毒」だ。一度プロテクター入りジャケットや脊椎パッドを使ってしまうと、それ無しで走るのはとても不安になる。脊椎パッドなど大げさだとは思っても、「40Kmで走っていたのに転倒時にガードレールの柱に背中か…

 ステッカー・ジャンキー

ツナギをどうやって保管する?革ツナギというのは、実際に手に取ってみるとひどく重いものだ。革だけでなく各部のプロテクターやパッドなどもあるのだから、重さを量ったら実際5キロくらいはあるんじゃないだろうか*1。それが身に付けると重さなど感じなくな…

 敵愾心

シールドの奥MotoGPのようなロードレースには、他のスポーツにはない大きな特質がある。それは、ある「気にくわない相手」をやっつけてやりたいと思ったら、直接それを果たすチャンスがいくらでもあるということだ。 サッカーだったら、相手チームのある選手…

 道─tao

おまえは間違っているまたいつもの奥多摩。前回とは打って変わって冷え込んでいるが、寒いというほどではない。ブレーキリリース、リーン、旋回。今一つスムーズにつながらない。調子が悪い時は下りコーナーに恐怖心を感じるからすぐわかる。フォームが崩れ…

 Boxer

Nobody Loves You僕はこの町にただ一人の牧師。皆が僕のところにやってきて相談や頼みごとをする。でも僕自身の話なんて誰も聞きはしない。ボケット一杯の僕のくだらない想い事を打ち明けられる相手は、神様だけ──そんなくたびれた気分になったときはどうす…

 アイズ・アンド・ドラゴン

憧れの革ツナギ環八の喧騒から逃れて自動ドアをくぐると、ドゥカティやアプリリアに混じってKTMやMVアグスタ、カジバといった普段あまり目にしない輸入車がずらりと並ぶ。左手のガラスの向こうには広いワークショップがあり、色鮮やかな何台ものマシンが作業…

 Doctor, Doctor

もはや言葉もなくダイネーゼの脊椎パットを手に入れようと思い「そういえば誌上通販が…」と『Riders Club』誌のバックナンバーをめくっていたら、ふとある記事タイトルが目に飛び込んできて心をぐさりと刺した。「やはり本命はバレンティーノ」──英『Road Ri…

 総員一層奮励努力セヨ!

自滅への道“Talent”というのはこういうものなのか。今夜の列島は熱心なる国内GPファンの嘆息で埋め尽くされた(嘘)。ヴァレンティーノ・ロッシ、ヤマハ移籍後初戦となる南アフリカGP、PP獲得*1。1分32秒647。昨年RCVで記録したサーキットレコードを0.8秒近…

 ユニオン・リユニオン

季節外れの雪景色季節は春。ときに汗ばむほどの暖かい陽気が続き、桜もすっかり鮮やかな葉桜に変わろうとしている。でも、僕のクルマのタイヤはブリザックを履いたままだ。これだけ暖かくなっても、まだ僕はスタッドレスタイヤを外さない。ゴールデンウィー…

 かくも長き不在

奥多摩よ!奥多摩よ!JR青梅線「東青梅」駅手前の陸橋を抜け、さらに奥多摩街道を上に通す要橋をくぐりながら坂を一気に下ると、空気の質ががらりと変わる。ヘルメットの中に吹き込んでくる風は、それまでの4車線道路のよどんだ排気ガスの匂いから、目の前に…

 さよならモトグッツィ

嗚呼、不人気車春。快晴。花粉なし。土曜日、僕は家族と友人をクルマに詰め込んで東京モーターサイクルショーへ出かけた。 皆春の陽気に誘い出されているのか、通常なら一時間で着くところを首都高はぎちぎちに渋滞し、更にはお台場出口から東京ビッグサイト…

 ハンドリングマシン・CBR600RR

行かねばならぬ時がある「4月1日、自分がこの一年間どうありたいのか考える日だ」と言ったのはマーク・トゥウェインだが、良くも悪くも一つの大きな区切りである新年度が始まった。自分が今年どうしたいかなんてつまんない話だから書かないが、街を見回せば…

 Deeds, Not Words.

もう今日は何も書くべきことはない。ただ膝をつき、じっと手の指の爪でも眺めて過ごそう。僕たちはまたあの同じ一年を過ごすのだ。ロッシ、ロッシ、ロッシ。「あいんべりべりはっぴとぅうぃんだれいす、あんだ…」もう聞こえはしないか、あのイタリア訛りが──…

 純粋培養の限界

黄金の道もしあなたに小さな息子がいたと想像してみよう。幸いにして心身壮健、モーターサイクルに興味を持っているようなので、ここはひとつ未来のGPライダーになるやもしれぬと期待して教育を施してみることにする。あなたは、彼が進むべき黄金ルートとし…

おまけ

ところで、これ、どうよ。 米『Sports Rider』誌による各社'04型リッターバイクのダイノマシンテストhttp://www.sportrider.com/features/146_0406_comp_dyno/ R1が172psという驚きの数値を引っさげて公開された後(なにせ、非常識なパワーとされていた'03型…

 紅い宝石

仕事始めの一日を癒す週に一度のお楽しみ(大げさか?)、今週の「ロックオンR」は数週ぶりに市販車のインプレで、八代俊二氏による豪イースタンクリーク・レースウェイを使ったYZF-R1の試乗レポート。欧州仕様のミストラル・グレイを前にして滔々と語る八代…