ラーメンモビスター・コニカミノルタ

Jet2006-01-20


普段民放などほとんど見ないのに、昨夜たまたまつけた番組がどっちの料理ショー。しかもラーメン対決と来たものだ。つばきを飲み込みながら見入るうち、勝利したのは新宿麺屋武蔵。対する神奈川の中村屋をひそかに応援していた僕としては複雑だが、すっかりラーメン気分が高まってしまったのは無理もない。僕はさっそくお昼休みを勝手に延長し、「麺屋武蔵」の青山店にやって来た。
件の『どっちの料理ショー』では、テレビで勝利したメニューと同じものが翌日(つまり今日)から店に並ぶというのが売りだったのだが、調べればそれは新宿にある本店だけの話。近いから駆けつけても構わないのだが、とりあえずは隣の駅だからとご祝儀に青山一丁目の支店へやってきたというわけだ。
さすがは一流店、午後一時半だというのに長蛇の列ができている。寒風に縮こまりながら順番を待ち、僕も味玉ラーメンを所望する。
僕の仕事場がある赤坂は、ラーメン通的には「ラーメン不毛地帯と言われているらしいのだが(笑)、どうしてなかなか自慢できる店も多い*1。そもそもかの名店「じゃんがらラーメン」や「赤坂ラーメン」があるのだから何をもって不毛地帯かと思うのだが、たまには世評高い店を求めて他所へ足を伸ばすのも悪くない。
店内は小さいが清潔感があり、食券をあらかじめ受け取り、待ちの人数にあわせて席を案内し、その“ロット”に合わせて作り始めるという混んだ名店にはよくある整然としたシステムに沿って、人々が従順に流れていく。
湯気を上げるラーメンを黙々とすする客の向こうで立ち回る店員達は、一見混乱しているようでいて、さながらヨットを動かすかのようにそれぞれの役割に沿ってかっちりと動いている。客の流れを見切り、麺をゆでるロットを判断するスキッパーがいる。そして他のクルー達は決して流れが滞らないようにテキパキと片づけや仕込みをしているかと思うと、麺がゆで上がるや否や中央にある調理台に群がり、いっせいに手分けしてラーメンを仕上げていく。さながら熟練した外科医のようだ。
初めて食べる「武蔵」のラーメンは、口にすると煮干しや昆布などをベースにしているという魚出汁風味のスープが濃厚に拡がるが、一瞬後からすーっと香りが溶けていき、「あれ?醤油ラーメンだっけ?」というようなアッサリ感に変わっていく。くどさは全く残らない。実は普段魚系のスープをあまり好まない僕も、喉ごしの良い縮れ麺と共に大満足で丼を空にした。


さて腹もくちくなったところで、青山一丁目まで来たとあってはホンダファンの総本山、ウェルカムプラザ青山を素通りするわけにはいかない。しかし陳列されたバイクを眺めながらコーヒーでも1杯と思っていた僕は、お茶気分などどこへやら、30分近く駄馬のようにフロアに立ち尽くすことになる。
というのも、先日発売されたCBR600RRの限定色、モビスター・ホンダカラーのモデルが並んでいたのだが、これがその場を離れられないほど奇麗だったのだ。
先日のエントリにも書いた通り、僕は'06モデルのパールファイアーオレンジにぞっこん惚れて乗り換えた(理由はもちろんそれだけではないが)。なぜか誰にこのデザインセンスの塊たる名配色の評価を話しても同意を得られないのだが(笑)、当然その時モビスターカラーの発売も知っていたわけで、もともとバイクにせよ車にせよ「青い乗り物」には魅かれない僕としては、それほどこのレプリカモデルには興味がなかったのが事実なのだ。
しかし、東京モーターショーのような遠い台上ではなく間近で目にすると、その下地となる青(キャンディタヒチアンブルー)が実に美しいのだ。CBR1000RRと同じ色のはずなのだが、ボディ全体が同色で覆われているせいか、ずっと生き生きとして見える。シートに腰を下ろすと、タンクから左右のラムエアダクトのシュラウドへ連なるボディが紺碧の海のように目を射て、僕は一瞬だけ自分の選択を後悔する(笑)。
スポンサーステッカー自体はモビスター・ホンダチームの面影を十分漂わせて心躍るものだが、一般の人が見たら耳なし芳一もいいところ(苦笑)。お世辞にもカッコいいとは言われないんだろうなあ、と思ってしまう。
予告されていたモデルではフロントアッパーカウルの脇にあったイタリアの鞄メーカーSEVENの赤いステッカーがなぜかスイングアーム左右に移されていて、ちょっと全体のバランスを崩すぐらい浮いている。さらに惜しむらくは、1000RRのレプソルカラーの時のようにタイトルスポンサーロゴくらいは塗装だと思っていたのに、movistarのロゴとマークも含めてすべてがステッカーだったところだ。洗車したらワックス残りが気になるんでは、などと要らぬ心配をしてしまう。
モビスターにくぎ付けの僕はコーヒーどころではなくなって、犬のようにモビスターモデルの周りを数十分ぐるぐる回ったあげく、ため息をついてウェルカムプラザを後にした。

今日のバイク気分はここでは終らない。仕事を早めに切り上げ、新宿までやってきた妻とマイサンと合流して、コニカミノルタプラザで開催中のコニカミノルタ ホンダ 玉田誠 激闘 MotoGP写真展」という説明的なタイトルのイベントにやってきた。
それほど熱狂的なコニミノファンというわけでもない僕としては、写真パネルなど見てどうするという気分も半分だったのだが、開催概要の部分にひっそり書かれた「レプリカマシン展示」という謎の一語に引かれたのが実情だ(笑)。
CBR1000RRのコニミノカラーでも展示するつもりか?と思って入ってみれば、どうしてちゃんとRC211Vが置いてあるではないか!排気系を見る限り'05シーズンのもののようだし、どこが“レプリカ”なのだろうか*2。このチームのマシンを間近で見るのは初めてだが、抜けるような白がカウルに映えて、かなりスタイリッシュなマシンだ。シングルスポンサーチームならではの美しさといったところだろう。
横には玉田仕様のツナギ装備一式を付けたマネキンがふんぞりかえっており、脇にP1 L8 +8と書かれたピットボードが置いてある。思わず「その通りになってくれよ〜」と願ってしまう。
写真展も、考えていたよりずっと興味深いものだ。オフショット満載というわけではないが、スタート前のグリッドの、直前の緊張でも待機時のちょっとだれた感じでもない独特の間がある瞬間や、負傷自慢をして包帯を見せ合っている玉田とホプキンス、また玉田誠自身が撮影したショットなど興味深い写真も数多い。
会場では「いつ作ったんだこんなの!」というようなコニカミノルタ・ホンダチームのスタイリッシュなプロモーション映像が流れていたりして、こじんまりした展示ながらそれなりに楽しめる。明日(21日)からの週末には会場で行われたトークショーの様子が上映されるというし、足を運ぶ価値は十分あるのではないだろうか。
──バイク、バイク、バイク(あ、ラーメンも)。M&Aの余波で、崩壊しつつあるライブドア帝国並に混乱している仕事場を離れて気分転換するには、やはりバイクに限る。あとは少しでも早く暖かくなればなあ…。

*1:僕のお勧めは「無双」だ。しょうゆ・塩・味噌と全種揃えている店は信用できないという僕の経験則をあっさり打ち破ってくれた。しかし返すも返すも悔やまれるのは、そのすぐ近くにあった金沢の「風龍」がすぐ撤退してしまったことだ。この店はあまり評判を聞かないのだが、ここの「赤丸」という辛口ラーメンは僕の人生の中で一位、二位を競う名作だ。しかし多忙極めるビジネス街で注文から出てくるまでに15分かかり、しかも店員がすべて日本人でなく注文が通りにくいとなれば、生き残りは難しかったのだろう。

*2:ひょっとしたら実戦に使っていない展示用の古いシャシーをホンダから借りて外装だけ変えた、とかいうことなのだろうか。