よくしゃべるCBR

Jet2004-06-21

梅雨の中休みとなれば、走っておかないわけにはいくまい。毎日夜中まで働いた甲斐あって、やっととれたぞ平日の休み。というわけで、オイルも新品の600RRを駆り出して、貸し切り状態の奥多摩へと出かけた。
前回ちょっとしたセッティングミスをしたこともあって*1めちゃめちゃな走りだったので、今日こそはと気合いを入れて挑む。調子は悪くないが、どうもうまく走れない部分もある。さて──。


キツイ下りの右コーナーがまったく効率的に曲がれない。インにつくのが速すぎる?曲率を読めていない?──よし、もうすこしブレーキを引きずったままクリッピングを奥に取り、倒し込みの時のイン側への入力をわずかに……
「あのな、あれこれせえへんといてくれる?」
──はい?
「だからな、余計なことせんでええねんて。ほっといてくれればワシ曲がれるから、ここ」
──いや、でも……。
「アンタは自分の体だけホールドしてりゃええねん。自分の心配せなあかんでまず」
──えー、でもちゃんとクリッピング付近できっかけ作って、内足に荷重して……。
「それが余計やねんて。ええか、つかまっとき」
──おおおー!
「どや、信用せなあかんで。例えばな、だれも乗ってへんワシをそのまんまリアこうつかまえてカーブに沿って倒してくやろ、それで曲がれへんと思うか?」
──いや、確かにその分倒れてくよな。
「そやろ?それ抑えてんのアンタやがな」
──でも、あんまりマシン任せだとほら、アウトにはらみそうだし……。
「アンタ、ワシなめとんか?自分、雑誌でいろんなワシのインプレ読んで、プッシュアンダーすぐ出るて記事一つでも見たんか?」
──いや、ないっす。
「しかもアンタ程度のスピードでアンダーなんてありえへんがな。ほら次いくで!外足!そこだけホールドしてりゃええねん」
──うっわー曲がるっす!……膝擦るかと思った。
「擦んなくてええがなそんなモン。とにかく邪魔してんのはアンタ、曲がるのはワシに任せりゃええの」
──うーん、じゃあ極論すればライダー不要ってことか?
「アホいうたらあかんで。誰がスロットルひねるんや」
──でも確かに、ごちゃごちゃ考えずただ倒しこんだ方がはるかに速いなぁ。
「そやろ?アンタは直線でしっかりブレーキングしてくれて、倒れたらがんとスロットル開けてくれたらええねん。曲がれるように曲がったるで。倒し込み速くするんはその後の話や」
──はー、最近深いコーナーほどバランスを崩してたのは進入の態勢を意識しすぎて体が固くなってたんだな。にしても信用して倒せばどんどん曲がる……すげえバイクだよ。
「ほな、今日帰ったらオイル換えてや」
──なんでだよ!先週換えたばっかりじゃん!
「自分、なんでワシにG2*2入れんねん」
──え……ホラ、安いし……ホンダはレーシングマシンでもカブのオイルで走るって……。
「それ神話やがな。しかもワシの純正指定S9やで」*3
──あ……。
「アンタ反省しとらんがな!先週4000キロぶりにオイル換えて、ほとんど枯れとって青い顔してたんもう忘れたんか!」
──いやまさかスズキじゃあるまいし、ホンダ製品がオイル1L以上減るなんて思いもしなかったし……ホラ店の人も不思議がってたぐらいで。
「そらワシにもなんでかわからん。でもその前もG2やがな(怒)。そんな中級オイルで高性能のエンジンがんがん回された揚げ句にオイル上がりや、もうシリンダーもピストンも傷だらけでスクラップ寸前や」
──大げさだなあ……しかもオイル上がっても下がってもいないって店の人もいってたじゃんよ。
「……ええんや、WSS常勝中*4スーパースポーツ車とはいっても、しょせん大量生産の市販車や。そこらのビグスクと同じオイル入ってるだけでもありがたいと思わなあかんねんし」
──拗ねるなよ!
「……ええねん、あんさんいいお人や。よう磨いてくれはるし、ええカバーも買うてもろた。毎週山にも連れてきてくれはるし、あとは焼きつくまでエンジン使てもろたらそれで幸せや……」
──やれやれ……。まあたしかに新しいG2入れただけでずいぶん違うし、前回までいかにフィーリング悪かったかわかるよなあ……。これでいいオイル入れたらまた全然違うんだろうなあ。ここはひとつ……。
「そやろ!そやろ!高回転エンジンにはエンジンの性分ってもんがあるんや!アンタのディーラー、R4の5W-40*5をS9より安うしてくれるんや、ほな早速ホンダさん行こか!」
──うげー……。*6


オイルはさておき、あたりまえのライディングの基本を再度しみじみと思い知って、また一つ得心した気分の僕。帰ってから妻に「今日はうまく走れた!バイクと“会話”できたよ」といさんで報告。
妻はそれを聞いて一言「あたまパーン」
──いやね、本当にそういうこともあるんだってば、男には……。

*1:“最新のSSはサーキットも対応しているので、一般道には規定空気圧が高すぎる”という言説をうのみにし、“圧を下げればタイヤの端最後の5mmも…”とよこしまな気持ちで0.2Kg/m2下げていったのが運の尽き。ブレーキングでゆるゆる、立ち上がりでフラフラ……。それをリカバーしようとリアの減衰をいじり始めてもっとドツボに……。規定空気圧は大事、という教訓でした。

*2:ホンダのウルトラG1/G2/G3/S9と4グレードある純正オイルのうち、下から二番目の鉱物油。経済性とスポーツ性能の中間をとったものとされる。

*3:しかも、その“レーシングマシンでも純正”という神話に使われているオイルは旧GP、今でいう最高級種S9……。

*4:実際には現在マニュファクチャラーズ・ポイントではヤマハに10pt負けている。

*5:カストロールスポーツ車用低粘度オイル。

*6:とはいえ自分を戒めるためとマシンへのねぎらいを兼ねて、この後ちゃんとG2を抜いてカストロール・R4を入れ、翌日再び出撃。これがなんと、添加剤入れてるんじゃないかというほどのスムーズさ。「ちょっと待ってー!」ってほどタコメーターがさっさと回る。オイルってあなどれないねえ……。