ロッシの隠れ家

Jet2005-08-19

忙しい。すごく忙しい。お盆休み?何ですかそれ。海?ああ地上にはそんな場所もあるらしいですね。
わかっていて身を投じたどツボとはいえ、ここのエントリを書く時間すらロクにとれない日が続き、終わりの見えない余裕のなさにだんだん妄想気味になってくる。
……パトラッシュ、僕もう疲れたよ。そうだ、どこか遠くへ行って、小さなサンドイッチ屋を開こう。たくさんの種類のパンに、温冷とりまぜた具材。おいしいコーヒーも出すんだ。そうだ、店にはGPライダーの名前をつけよう。“カフェ・マッシミリアーノ”、“リストランテ・セテ”……壁にはライダーの肖像を飾り、店の隅にしつらえたモニターにはいつもWGPの映像が流れ──。
待てよ。僕ははっと飛び起きた。そんな店あったぞ、確か!
検索すること数分、果たして僕の目の前にはその店のWebサイトが現れた。さっそく家を飛び出して、車で北上すること小一時間。やってきたのは、埼玉県新座市にあるレストラン「ダイニング・ロッシ」だ。
店に近づくなり、#46のゼッケンが光るぴかぴかのCBR600F4iが佇んでいるのが目に入る。見たところ、ホンダから発売していたナストロ・アズーロカラーの限定車に、さらに綿密なステッカーチューンが加わっているようだ。
それだけでわくわくしながら店内に入ると、清潔感ある落ち着いた店内のあちこちに、ロッシやGP関連のポスター、バイクのミニチュアなどが飾られている。壁にはこの店を訪れた人たちのサインや写真も控えめに飾られていて、見れば加藤大治郎宇川徹、そしてヴァレンティーノ・ロッシ本人もいるじゃないか!
メニューの中心は、やはりと言うべきかイタリア料理。さっそくあれこれ注文して宴の開始だ。オーナーには大変申し訳ないが、これまでのいくつかの経験から正直、味にはあまり期待していなかった。しかし!どれもこれもめっぽううまい。特にオリーブオイルとニンニクで煮たシャンピニオンなどは絶品で、いくらでも酒が進む進む(笑)。勝手な想像がまったく申し訳なくなる。
酒といえば感激したことに、さも当然のようにドリンクリストに「Nastro Azzurroが並んでいる。さっそく注文して初体験。想像していた通りさっぱりしたライトビールで、気取らず瓶から直接飲みたくなるような軽快な味わいだ。なにより、ラベルが黄色くなかったのが驚きである。*1
食べながら妻とGP話に花を咲かせるうち、二人ともセテの本名が思い出せずに苦しみはじめる*2。せっかくこんな店なのだからと、不躾にもウェイターに「セテの本名ってなんでしたっけ?」とか聞いて困らせている僕たちのところに、カウンターの奥からそれを聞きつけたオーナーがやってきた。


聞けば、彼がこの店を開いたのは2000年。ロッシが500ccにステップアップした年だ。相当のロッシマニアックなのかと思っていると、ロッシだけと言うよりも子供の時からWGPファンなのだという。店を開く時に、語感の良さと、当時からひたすら上り調子だった彼にあやかろうとこの名前をつけたのだとか。
しかしこの店の立地は、ホンダファンの聖地(?)、HRCのある朝霞研究所のお膝元だ。事情を知らないものからしてみれば、ロッシの名を冠した店をこの立地で開くのはそれなりに意図があるのかと思ってしまうが、それも偶然なのだと言う。このあたりで店を開く物件を探したのは、たまたま地方の実家を出てこの志木・朝霞周辺に住んでいたからで、HRCが近くにあることも店を開く直前に知ったとか。
やがてこの店がホンダやGP関係者の“隠れ家”的なスポットになっていったのも、たまたま朝霞研究所の関係者が店の前を通りかかったのがきっかけという“偶然”だが、それがついにはロッシ本人(例の親友、ウーチョさんらと3人で来たらしい)を始め岡田忠之青木治親清成龍一などのホンダ契約ライダーも来店するGPファン垂涎の店になったのだから、なんともうらやましい巡り合わせである。
先日の鈴鹿8耐の祝勝会もここで行われたなどと聞くと、なんとも楽しくなってしまう。オーナーが清成龍一はすごい飲む」と強調していたので、相当な盛り上がりぶりだったのだろうか*3。そんな、雑誌などではわからない素顔のライダーの話が聞けるのもいい。
さらに、ライダー本人もさることながら、チームメカニックの人たちの来店が多いようだ。特にオフシーズンの2〜3月などはマシンのテストなどで朝研を訪れた人たちが集まり、店内は外国語であふれるとか。イタリア語やスペイン語を勉強してオフシーズンにこの店で耳をそばだてれば、貴重な来期の情報が手に入るかもしれない(!)。
NHK時代のようにGPがほぼ生放送で見れなくなった今では、店の大型プロジェクターを利用した観戦デーもあまり盛り上がらなくなったというが、来月の日本GPの時は店を閉めてもてぎに行くという。商売よりGPをとるオーナーの心意気に共感しながら、僕たちは礼を言って店を後にした。

表に停めてある600Fには、マフラーのサイレンサーにPoliniのステッカーが光る。どうやってこれを手に入れたのかとオーナーに聞くと、NSRに貼られていたのと同じ“本物”を関係者にもらったのだといううらやましい答え。その他MANPOWERなど純正にはないステッカー類もすべて実物だとか。
いやはや、まさにGPファンの天国だ。バイク好き、GP好きがマイナー扱いされず、話が通じる店なんてのはそう多くはない。最後は閉店時間になってしまったので店内の展示物などをじっくり見れなかったのが残念だが、なによりも食事が美味しかったことに深く満足しながら、僕たちはまたここに来ることを誓った。
バイクで来るのもいい。酒が飲めないのが残念だが(笑)、ツーリングの帰りに一息入れたり、GPの録画中継をやっている日にふらりと来てレース談義をするのも楽しいだろう。このあたりに地縁のある人は、ぜひ一度訪れてみることをお勧めする。“僕はここに居てもいいんだ”(笑)なんて妙な心地よさにひたれることうけあいだ。

*1:後で調べたら、ナストロ・アズーロとは「ブルー・リボン」の意だとか。するとGPでのスポンサーカラーが黄色なのは何故なんだろう?

*2:結局オーナーと頭をひねってもわからなかったが、その後店を出る前に思い出して自己解決。「マニュエル・ジベルナウ」だ。確か“セテ”はおじさんの名前だっけ。
http://de.wikipedia.org/wiki/Sete_Gibernau

*3:しかも祝勝会は清成選手のおごりだったらしいですよ奥さん!