サイン三昧

Jet2005-09-16

いよいよ日本GPウィークが始まり、内心「きゃふ−ん」とでも叫びたいほど落ち着かないのだが、そこは大人なのですました顔で「お世話になります」などとクライアントにメールを書いている。
とはいえ、いかに仕事が忙しかろうとも、憲法で健康で文化的な生活を保証された国民として、年に一度の楽しみを邪魔されるわけにはいかない!なんとか溜まった仕事を人におしつけ(え?)、僕も明日からZ席に陣取る予定である。
そんな興奮をさらにもり立てるかのように、先日の水曜日、ブリヂストンの小平工場にGPライダーたちがトークショーにやってきた*1
この工場、実は僕の住むところから自転車でさほどかからないところにあるのだが、同じ空の下どころかこんな近所にGPライダーが集まるとあっては、いても立ってもいられない。僕は妻とマイサンを連れて、酷暑の中TODAY館と呼ばれる工場併設の展示施設で行われたこのイベントに顔を連ねた(あれ?仕事は?)。
このTODAY館はこじんまりとしてはいるが快適なスペースで、さまざまなタイヤの種類や製造過程を学んだり、また摩擦係数や反発弾性、温度などによってゴムにどんな変化が生まれるのかを、実際に手で装置を動かしたりして体験できる。全体を回るのに小一時間もかからないが、F1マシンはもちろんのこと、ケニー・ロバーツ用のGSV-Rがさりげなく常設展示してあったりする、あなどれない施設なのである。
この日はそのGSV-Rに加え、ZX-RRとデスモセディチGP5が表に並べられ、強い日差しを浴びて輝いている。もうすぐこいつらが走るところを実際に目にできるのかと思うと、いやがおうにも盛り上がるではないか。


炎天下の中、姿を現したのは中野真矢アレックス・ホフマンロリス・カピロッシカルロス・チェカ、ジョン・ホプキンスの各ブリヂストンライダー。事前の告知通りケニー・ロバーツの姿はなく、一人だけチームメイトのいないホッパーは少し所在なさげだ。意外なことに一番オーラを放っていたのはチェカ様で、長身でジーンズにだらっと手を突っ込んだポーズもキマッていて、いかにも歴の長いスペインのスターっぷりを感じさせる。
テンションの高い女性司会者の進行でトークショーは進むが、タイヤつながりという微妙な関係だからか、皆どこか他のライダー達に気を使っているような物言い。ひとり威勢のいい発言で会場を沸かせるようなライダーはいない。
インタビューには通り一遍の答え──1)チームはいい仕事をしてくれるし、2)調子も上がってきているので、3)もてぎではきっといい結果を出せると思う──が繰り返され、それほど面白くはないのは仕方がないところか(このあたり、同じ複数チームのラインナップでも日本人ライダーだけのイベントなどとは明らかに違う)。
とはいえ、中野真矢だけは日本人ということもあってリップサービスで会場を盛り上げてくれる。さらに、ホッパーの「とにかく1コーナーを抜けることさえできれば大丈夫さ!」に笑いが沸き起こる。
ライダー達の立ち居振る舞いもそれぞれで面白い。中野とホフマンは始終クスクスと笑いあい、とても仲がよさそうだ。それに対し、身長差の大きさが際立つカピロッシとチェカはほとんど目も合わせず、ビジネスライクな関係という印象だ。
わからない日本語司会の間も愛想よく注意を向けているカピロッシやホフマン、こういう場所苦手だな〜という感じでガムを噛みながらポケットに手を突っ込み、いかにも若手ルーキーといった感じのホッパー(しかしすごい胸板だ!)、旅疲れでぼーっとしているのか、ちょっと面倒くさげなチェカ様など、5者5様といった感じである。

インタビューが済むと事前に配られていた券で抽選が行われ、Tシャツや帽子、使用済みニースライダー(!)などサイン入りのグッズが配られていく。「何か当たるかも…(なにせ家族三人分の抽選券があるしね)」なんて調子よく思っていたら、まさに手元の番号が呼ばれた。そしていただいたのはチェカ様のサイン入りブリヂストン帽子
これも嬉しいが、カピロッシやホッパーのサインも欲しかったかも…なんて罰当たりなことを考えていたら、驚いたことに最後にライダー全員によるサイン会が始まった。しかもブリヂストン側が色紙を用意し、流れ作業で5人全員がサインをしてくれるという大盤振る舞いだ。
GPライダーを間近で見れた上に大量サインまでゲットして、僕たちはほくほく顔で小平工場を後にした。家には宇川徹やマックおじさんのサインもあるし、なんだか年季の入った野球ファンの家みたいになってきたな、などと思いながらも、はや心はもてぎに飛んでいく。
あの山あいのすーっとした空気。道すがら、すべての車やバイクがもてぎに向かってるんじゃないかと思いたくなるあの高揚感。駐車場からコースに向かう途中、プレリュードのように聞こえてくる125ccのエグゾーストノートに走り出したくなる*2──そんなグランプリの昂奮は、もう目の前なのだ!

*1:僕は、これまで愚かにもここがGPタイヤ開発の中枢だとは知らずにいたのだ。正門の前を車で通り過ぎながら、「頼むぜ〜ブリヂストン!」「意味ないよ、ここはただの工場なんだから」なんて会話を繰り返していたのが悔やまれる。去年のリオやもてぎの翌日には、正門前にシャンパンでも供え、旗でも振るべきだった(迷惑だっつーの)。

*2:例年埼玉にある実家を拠点にしていることもあって、だいたいサーキットに着くのが9時前。というわけで125のWUP音なんである。しかし今年はそうはいかない。珍しくピットウォーク券など買ってしまったからだ。──起きれるのか?