最速の遺伝子

Jet2005-09-02

忙しいのは相変わらずだが、どうも尻の下がムズムズして落ち着かない。最近急にDucatiが欲しくてたまらなくなった。しかも、乗りこなすのに相当な熟練が必要な996シリーズ、それか998なんていい(厳しければ厳しいほど燃えるのだ!)。そう思い始めて、Webサイトで中古市場を調べ始めた。
──おっと。経験豊かな僕は、こうした症状がどうして起こるか知っている(笑)。ここ半月以上まともにバイクに乗っていないからだ。週末にでも時間を作って一発ツーリングでもすれば、こんな気分は吹き飛ぶ。いつものことなのだ。
そんな気分になる理由は、わが愛車CBR1000RRの特質だ。このバイク、乗っていないとスタイルや挙動などにいろいろ不満を感じ始めるが、しかしひとたび乗り回すとどんな不満も胡散霧消するという、通常とは逆の不思議なマシンなのだ*1
とはいえ、間近に迫った日本GPの興奮もあり、なにか代償行為でもしないと落ち着かない。そう思った僕は、仕事場を抜け出して地下鉄に潜り込み、新宿へと向かった。目指すはテアトル新宿──そう、来週末から始まる映画『FASTER』の前売り券を手に入れようと思い立ったのだ。


海外では2003年に公開されたこの映画、これまでは英語の公式サイトでTRAILERを見て満足するしかなかったが(輸入DVDはあったけれど)、いよいよ字幕が入って日本公開だ。とはいえ、単館で、しかも9:20からのレイトショー1回のみという無体な扱い(笑)。5週間の限定公開なので、まあ日本GPのプロモーションといったところだろう。
それでも観れないよりはマシである。僕は頼み込んでマイサンを実妹に押しつけ、妻と一緒に初日に映画館へ乗り込むという目論見なのだ。子供を持って以来、ふたりで映画に来れる機会なぞまずなかったのだが、やっとつかんだその機会がGPのドキュメンタリーというのは何とも色気のない話だけれど(笑)。
というわけでテアトル新宿で前売りを所望すると、話には聞いていた特典の「大治郎バッヂ」とやらが大量にビニール袋に入ってどさりと供された。見ると何種類かあって、好きなものを選べという。
これがまた驚くほどパチもんくさいものばかり(笑)。正規ライセンス品なのだろうけれど、青と黄色という後年の大治郎の基本カラースキームなんて完全無視。赤いハートマークの上に74が描かれたものや、意味不明な偽モッズっぽい二重丸が配されたものなど、思わず失笑してしまう。
まあそれはそれで、比較的それっぽい物を2点査収して、僕はテアトルを後にした。

黄色と赤という迫力ある色基調だった海外サイトと違い、日本公開版の公式サイトやチラシはセンスのあるグラフィックデザイナーを配していて、80年代のドキュメンタリータッチを今風に起こしたようなザクっとしたデザインで好感が持てる(前売り券なんて「白黒」なのだ!)。
楽しみつつチラシを眺めていると、「ライバルの遺伝子」と称して、ケニー・ロバーツ VS バリー・シーン、ケヴィン・シュワンツ VS ウェイン・レイニーと並んで、ヴァレンティーノ・ロッシ VS マックス・ビアッジの文字が並んでいて思わず号泣する。そう、この映画が対象としている2000年〜2002年シーズンは、そんな時代だったのだ(なにせメイン・フィーチャーはギャリー・マッコイなのだ!)。
ああビアッジ先生…。crash.netにもあった通り、先日のブルノでレースを通してラップタイムが2分台に落ちた回数が一番少ないのはあなたなのだ…*2!あんた最速だったんだよ先生!
小型になった新型RCVでチャターも解決して気を良くしているらしいそんなビアッジさんにわずかな期待をかけながらも、僕はレイトショー初日に思いをはせる。こんなマイナー映画の単館上映に初日からやって来る人たちは、よほどのフリークたちに違いない。スクリーンに向かって拍手喝采、試写会めいた盛り上がりが期待できるだろうか…?妻曰く、「ツナギで来る人はいないでしょうね…」。そいつはいい、興奮したライダーたちが深夜の靖国通りでバーンナウト合戦か?(捕まるっつーの)
そんなことを考えながら手元の前売りチケットを見たら、通し番号が2と3だった…orz。近郊のGPファン諸氏よ、大治郎バッヂも大量に余ってましたよ!ここは一つ、新宿へ出向いてはいかがでしょう?

*1:1000RRがオーナー以外のライダーの間で妙に評価が低いのも、さもありなんである。車重やユニットプロリンクの特性などツッコミどころは多いが、一度でも実車を駆けたことのあるライダーなら、その乗り味の好き嫌いでこいつを避けることはできても、決して否定は出来ないのではないかと思う。

*2:ロッシは初周と、ジベルナウの“様子見”をした16〜18周で2分台、対してビアッジは初周と21周目の2回しかない。そりゃ追い上げてくるわけだ。