滋養強壮グランプリ

Jet2005-07-08

今シーズン前半戦の白眉(と言っていいだろう)、USグランプリがもう目の前だ。あの80年代の数々の熱戦の舞台となったラグナ・セカ、そして“名物”コークスクリューを現代のGPマシンが駆けるのかと思うと、かつてと比べ物にならないモンスターマシンへの一抹の心配はあれど、興奮は高まる一方だ。
10年ぶりに世界グランプリが戻ってくるとあって、イベントとしての盛り上がりも他のレースより華やかなように見える。チケットは早々に売りきれたというし、USグランプリの公式サイトも立ち上がっている。ケニー・ロバーツニッキー・ヘイデン、ジョン・ホプキンス、コーリン・エドワーズら「アメリカン・ライダー」は俄然注目の的となり、みな勝てるのは自分だけだと言わんばかりにホームグランプリの抱負(と、延長された予選セッションへの不満)を語っている。
英人シェーン・バーンですら“ケニーのチーム”を走るということで「ここはホームのようなものだ」と言い出す始末。50周年記念で気合いの入るヤマハ*1ロッシ車に往年のストロボカラーを配してきて感涙ものだし、このUSグランプリ、どこかパドック全体が興奮気味であるように感じるのは単なるファン心理なのだろうか。


というわけで、このグランプリのスポンサーであり、鳴かず飛ばずのGSV-Rをやっとワークス以外のカラーで覆ってくれた飲料メーカー「RedBull」に敬意を表し、このマイナーなドリンクを飲んでみることにした──と言えばいかにも忠実なファンだが、実は仕事でこのメーカーとからむ“可能性”があり、リサーチに出掛けたというわけである。
やってきたのは首都圏を中心に展開する「HUB」というイングリッシュバー。RedBullはフツーには市販していないので、こうした場所で並行輸入のものを手に入れるしかない。
というのも、この飲料はパッケージのカラーや様々なスポーツへのスポンサー活動から一見ソフトドリンクと思われがちだが、実は日本で言う「リポビタンD」や「アリナミンV」と同じような滋養強壮飲料なのである。調べると、タウリンなど有効成分の含有量はまさにリポDとほぼ同じ数値。となれば日本では「医薬部外品」の指定を受けることになり、薬事法の適用対象となる。となれば、そうそう簡単に日本市場に参入してこれないのもうなずけるというわけだ。
タイの肉体労働者層向けとして始まったこのエネルギー・ドリンクがいかにしてオーストリアのメーカーに変身し、はたまたなぜ物騒なことに一部の国では「禁止薬物」扱いなのか、などはウィキペディアの解説に詳しいが*2、ともあれ僕は仕事場のスタッフと一緒に開店まもないこのバーに乗り込み、シャツのボタンもかけていないバーテンに意気揚々とRedBullを注文したのである。
HUBではこのドリンクをそのまま供しているわけではない。ウォッカとまぜた「ウォッカ・ブル」、ダブルウォッカりんご酢、ビールを加えてRedBullと合わせた「ストロング・ブル」(!)などエナジーカクテル”と称する飲み物のベースとして使うのである。
そこへあやしげな一団がやってきてレッドブルだけストレートでよこせ」*3というのだからバーテンも面食らったとは思うが、エナジーカクテルは人気がないのか、なんと在庫は2本のみ。とりあえず申し訳にビールなどを傍らにおいて、なけなしの2缶を皆で小分けに注いで「レッドブル・パーティー」が始まった。
飲む前から味についてはいろいろ脅かされていたし、いわゆるリポD系と同じ風味と考えればあまりわくわくするものではない(学生時代、巨大なオロナミンCである『ライフガード』の一気飲みが“罰ゲーム”だったことを思い出す)。
ところが飲んでみると、これが思ったほど悪くない。味はそのまんま、そのへんの強壮飲料だ。そこに、シャープな酸味と甘味が加わっている。ちょっと後を引くくどさを持つその甘味は、JellyBellyラズベリーを噛んだ後口に来るのと同じ種類だ。
まったくもってこいつはアルコールと合う味だ──と、ストレートで飲むことを惜しみつつみんなぐいぐい飲み干してしまう。ナイトシーンに詳しい(笑)スタッフの一人などは「この甘さはクラブで受けるはずだ」と深くうなずいている。

いかにもうまそうに水滴を浮かべたままの250ccのボトルを見つめながら、頭は仕事半分、GP半分だ(笑)。
レッドブルはUSグランプリの後もスズキをサポートしてくれるのか?3,610mと相当に短いが、グランプリ中屈指の高低差を持ち、あらゆる性格のコーナーを内包するというラグナ・セカを制するのは誰なのか?かつてのようにウィリーしながらコークスクリューを切り返すMotoGPマシンが見れるのか?──というか、ホプキンスがグリッドでちゅうちゅう飲んでいるレッドブル印のボトルには、本当にこいつが詰まっているのか?(さすがにそれはないと思った)*4
そんなことを考えながらビールをチェイサーに(?)飲むレッドブルで、いつしか体がポカポカしてくる。この強力な滋養強壮飲料が効いているのか、単なる気のせいか。とにかく、社会人諸氏、月曜日半休の申請はすませただろうか(笑)。注目の大レースは、もうすぐだ!
──ちなみに本来、RedBullとアルコールを合わせることは公式には推奨されていない(!)。

*1:そう言えば僕は、G+の解説・宮城光氏の「ヤマハ」のイントネーションが英語風(ヤ〜マハ、と発音した時のような)に下降気味なのがすごく気になっている(笑)。あれは関西出身の人だからなのだろうか?同じく関西出身の妻は「そんなことない」と言うのだが…。

*2:URLにカタカナが含まれているせいかうまくリンクせず。googleで「レッドブル」で検索して、wikipediaの内容を見てほしい。

*3:ウォッカ・ブルが700円なのに対し、RedBullをストレートでもらうと1000円とられるので、一応注意。

*4:レッドブルAMA時代からのホプキンスの個人スポンサーでもある