ライダーたちの無人島

唐突に思い立って、この“はてな”のプロフィール欄をきちんと書いてみた(アドレスの最後に“about/”をつけることでそのページに行くことができる)。その際ひとつの遊びとして、MotoGP公式サイトの「ライダー」ページにある各選手への質問項目をそのまま使ってみたりしたのだが、参考に各ライダーの回答をみていてちょっと面白かったことがある。
質問に無人島に持っていくもの」という項目がある。別にこの質問自体は面白いものでも何でもなく、「もし百万円あったら何をする?」みたいな戯れの質問としてよく出てくるものだ。ただ、その回答の意図みたいなものが違うのだ。
僕は、この質問というのは「人生においてもっとも大切なものは何か?」を問うのと同じような観念的なものだと思っていた。自分の人生からほとんどのものが奪われるとしたら、最後に残すのは何か。言ってみれば「死んだ時に一緒に燃やして欲しいものは?」みたいなものだ。
自分を変えた本、心を支える音楽、思い出の品──出てくるのはそういうもので、無人島で「暮らす」ために必要な現実的なものではないと思っていた僕は、ライダーたちの意外にもプラグマティックな答えにちょっと面食らってしまったのである。


ためしに以下に、'04シーズンのライダーたちの回答を並べてみよう(全員がこの設問に答えているわけではない)。

ウワォ!みんななんか「暮らす」ことを想定してるぞ(笑)!そりゃ確かに女性や家族が一緒にいればベストだが、“無人島”というストイックなテーマが台無しのような気もする。
バロスはあまりにも模範的回答。この生真面目さがGPで14年間もキャリアを維持する秘訣なのかもしれない。チェカの「一冊の本」というのが何の本なのかは読書子としては気になるが、青木宣篤の回答には「そんなにインターネットが好きなのか」と苦笑してしまう。無人島から自分のサイトを更新してくれるのかもしれない。
ジベルナウが恋人を差し置いてまで持っていきたいとする生ハムはどんなに美味しいものなのだろう?ホプキンスはすっかり遊ぶ気でいるし、カピロッシの持ち物も漂流というよりは完全なバカンスである。
どうしてもGPライダーたちは、“島”と聞くとオフシーズンに羽根を伸ばすという連想になるのだろうか。それともこれが西洋でのフツーの“もし無人島へ…”の感覚なのか(あるいは、プレスやファンに追われる彼らにとって、“無人島”とは格好の息抜きイメージなのか)?


いずれにしても、ほとんどのライダーが無人島でつつがなく生き延び、あまつさえきちんと“帰る”ことを連想しているのは逞しいというか、頼もしいというか。ロッシにいたってはハナから「遊んで帰る」気まんまんである(笑)。こうした現実主義とサバイバル意識こそが、WGPという世界最高峰の舞台に昇り詰める秘訣なのかもしれない。
とすれば、ともすれば求道的で精神主義も顔を出すとされる日本のライダー──ひいてはスポーツ選手育成の世界は、“生真面目さ”においてまた彼らとは異なるテイストなのだろうなあ……と思うことしきりである(いや、僕は僕でかの人の「双輪道」みたいなのも嫌いじゃないんですけどね(笑))
──にしても、無人島でカウチに座って犬の頭をなでながらテレビみてるビアッジって、新聞の一齣マンガみたいでなんか絵になるよなあ。