ローリン!

Jet2004-01-22

首都高速を走っていると、一般道ではあまり見ない標識が目に付く。「危険!ジグザグ走行」という文言と共に、バイクの姿が書いてある看板だ。
ジグザグ走行といってすぐに思いつくのは、高くフロントカウルを付き出し、シートにバカバカしく長いバックレストをつけた暴走族のバイクだ。ノーへルの二人乗りで、何が楽しいのか片側の車線をいっぱいに使ってうねうねと蛇行しているシーンが思い浮かぶ。
(まったくしょうがないぜ暴走族ってやつは、こういうののおかげで普通のバイク乗りまでが…)と思って看板から目を戻すが、その瞬間ひどいことに気づく。その看板に描かれていたライダーは、フルフェイスヘルメットをきちんと被り、レーサーレプリカを彷彿とさせるバイクに乗って、あまつさえハングオフの体勢をとっていた事を。あれは我々一般の、しかも安全装備を整え、アグレッシブとはいえ正しいライディングポジションまで取っているスポーツバイクのライダーということになるのだ!


これはあんまりだ。「この川で泳いではいけません」の看板に、スイムパンツにゴーグルで美しいクロールのフォームをとっている男を描くようなものではないか。そんなヤツは川で泳いだりしない。同じように、レプリカ乗りは“ジグザグ走行”なんてしない。リーンアウトで逆ハンをこじりながら狭い道幅いっぱいに蛇行したって、スポーツバイクにはいいことなんて一つもないのだから。
これは何も知らない善良な市民に暴走族と一般ライダーを混同させ、バイク乗りのイメージと品位を著しく貶めるものでアル!即刻撤去あるいは相応のバイクに描き変え、謝罪と再発防止を要求スル!
…とかねがね思っていたら、首都高湾岸線付近で別の看板を見つけた。
そこには、もっとはっきりとレプリカ乗りの姿が描いてあり、「死につながるローリング走行、禁止」と文字が添えてある。そこで僕は思い出した。首都高、特に湾岸線はハイパワーをぶつけるリッターレプリカや高速ツアラーにとって、格好の最高速測定場代わりになっていることを。「ジグザグ走行」も、200キロ近いスピードで疾走するバイクが周囲の一般車を右へ左へとパスしていく姿だと考えれば、納得がいく。さらに「ローリング」という言葉を使われればもう明らかに暴走族の事ではない*1
つまり、あの看板はやはり我々レプリカ乗りに向けたものだったのだ。そう思うと、なんだか「ちぇっ」という感じはするのだが、困った事にこの看板に警告されているようなライダーを責める気持ちにならないのは、同じようなスポーツバイク乗りとしての情なのだろうか。僕だって休日ともなれば全長18Km程度の狭い奥多摩周遊道路をせっせと行ったり来たりしているのだから、やっていることは“ローリング”である。

700円出せば整備され曲がりくねった信号もない道を延々と走っていられるのだから首都高族の気持ちもわからないではないが、僕自身は「ライディングを楽しむ場」として使った事はない(芝浦PAヘ“鑑賞”に行った事はあるけれど)。車体を突き上げるアスファルトの「継ぎ目」で体が硬くなるし、高速道路という性質上後続車もスピードを出していて、ミスをしても安全にスピードが落とせない。さらに、転倒したら数十メートル下の地上へ真っ逆さまなんじゃないかという先入観、そしてなにより首都高の主役は改造四輪であり、二輪はちょっとちんたらすると彼らに巻き込まれかねないという恐ろしい環境にどうしても馴染めないのである。
遊び場としては山のワインディングの方がリスクが少ない気がするのだが、最悪の結果が同じである以上比べてもあまり意味がないだろう。ひょっとしたら、僕には首都高を攻めるだけの技量(と、継ぎ目をものともしないオーリンズのサス!)がないだけなのかもしれない。ともあれ、気持ちはわかるけど、あんまり事故を起こして行政を変に刺激しないでくれよ!と思うのであった。

*1:ローリング族」には明確な定義はないが、四輪にも二輪にも使われる。主にワインディングや埋め立て地の一定範囲内をクローズドコースに見立て、繰り返し“攻める”行為のことだ。パワーやチューニング、テクニックが要求される点で暴走族の走りとは異なる