Gossips in GP

Jet2004-01-20

モータースポーツに限らずスポーツ界にはゴシップが付き物だが、マイナースポーツのせいかお行儀が良いのか、それともメーカーに配慮して記者がそこまで突っ込まないのか、GPやライダーを巡る毀誉褒貶というのは国内ではあまり表には出回ってこない。
しかしライダーも関係者も人間である以上ドロドロした面はかならず出てくるはずで、そればっかりではうんざりするがたまにはスパイス的に摂取するのも悪くない。
他人の褌だが、WGPファンが集まる某老舗サイトの掲示板では、イタリアの『MOTOCICLISMO』誌の引用として、以下のようなヴァレンティーノ・ロッシのインタビューの一部が引用されていた。

HRCの日本人達とは一時とも良い関係を築く事が出来なかった。ナカジマにしろカナザワにしろ、何を考えているのか分からなかった。彼等と交わした契約は終わりなき悪夢の連続だった。カナザワは日本的やり方で事を進めないとないと気が済まない人だった。そんな彼と理解しあう事は無理だった。言わせてもらえば、ホンダの人達は感情も心も持ちあわせないロボットのようだった」
原文(アクセント省略)
"Nunca he tenido buenas relaciones con los japoneses de HRC.
Ya sea Nakajima o Kanazawa, nunca he entendido que tenian en la cabeza y cada contrato que he firmado con ellos ha sido una pesadilla interminable.
Kanazawa no soporta lo que no sea japones y es muy dificil entenderse con el.
Para mi, la gente de Honda son una especie de robots sin alma ni corazon."

“ナカジマ”とはHRC総監督中嶋康二氏、“カナザワ”とはHRC社長金澤賢(すぐる)氏のことだ。2000年以来4年にわたり在籍し、500ccとMotoGP合わせて3度のチャンピオンシップを共に獲得したメーカーに後ろ足で砂をかけるような鋭い舌鋒は、思わず「おお!」と唸ってしまう。ヤマハ移籍劇の裏にはホンダでの居心地の悪さがあると一部で伝わっていただけに、口に立てた戸をはずしたロッシとホンダとの舌戦の始まりか、と期待すらしてしまうのは、ストーブリーグの退屈さ故か。
文面だけ見ると、ホンダのレース体制からマシン開発まであらゆるところが嫌だったという風にもとれる。しかしロッシが、ホンダが自分の私生活や肖像権まで管理しようとするのを嫌い、契約が最後までまとまらなかったのも肖像権の問題が大きかった、という噂を念頭に置いてみると「終わりなき悪夢」というのはだいたいそのことなのだろうな、という気がする。自由奔放なイタリア感覚からすれば個人生活に立ち入られるなんて信じ難いことだろうし、「カイシャ」を中心に物事が決められていく日本流儀はまったくソリが合わなかったに違いない。


もう一つ、有名な海外情報ソースであるcrash.netでは、ロリス・カピロッシが同じイタリアのスポーツ新聞『ガゼッタ・デッロ・スポルト』に対し、遅ればせながら加藤大治郎事故調査委員会の結論に気分的な疑問を投じているのが報じられている。


「俺はカトウを知ってる。アイツは非凡な才能を持ったライダーだし、俺達と同等の強さを持ち合わせてた。たった3ラップ目でああいう種類のミスを犯すライダーじゃない。何かが起こったんだと思うね。
130Rからシケインの間で転倒するなんてありえない。そこに進入して、ブレーキングして、曲がるだけなのに、そこであの報告書には書かれていない何かが起こったのさ」
原文 http://www.crash.net/uk/en/news_view.asp?cid=6&nid=83701
"I knew Kato, he was a rider of exceptional talent," Capirossi told La Gazzetta dello Sport. "He was strong and of 'our' level. He wasn't someone who would make that type of mistake after just three laps. I think something else happened.
"It is impossible to fall there (between the 130R and chicane) you arrive, brake, turn in but something else happened to him that (the report) says didn't," added the Ducati rider.

思わず「な、なんだってー!」と叫びたくなるようなコメントだが、その「何か」が何なのかはこれからもわからずじまいだろう。ウィーブ発散時に切れていたクラッチ、という思わせぶりな要素がある以上、この話は禍根とともにGP史上で語り継がれる謎であり続けるに違いない。どちらかというと意見というよりはつぶやきに近く、酒が入れば誰もがもっともらしくぶち始めるような内容で、実はこんな風に記事になってカピロッシ自身は迷惑しているかもしれない。
こうしたライダーの「人間的な」コメントも、お行儀よく公式リリース中心に進むGPアーティクルの中にあって、たまにはいいスパイスになるのではないだろうか。日本版crash.netみたいなものがあると面白いが、国内ではすぐに体制や行政の批判中心に走り、『ニューモデルマガジンX』のような社会派臭いものになってしまうような気もする。『Cycle Sounds』誌の「GPコンフィデンシャル」程度が関の山だろうか。いずれにしても、公式情報もゴシップも合わせて、もっと柔軟に楽しみたいものである。