CBR600RRアンケート

Jet2004-01-09

郵便受けに、ホンダさんのロゴが踊る一通の封筒。あれ、なにかカタログでも注文したっけ?と思ったが、開けてみるとCBR600RRのユーザーアンケートと、謝礼としてHONDAのロゴ入りカラビナキーホルダーが同封されていた。
オーナー全員に送られているのか、有力ショップの顧客に送られているのかはわからない。それとも、僕の600RRは車体番号が驚くほど若いので、“最初期に注文した熱心なヤツら”に送られているのかもしれない。
新型車アンケートといえば、その昔スズキのVolty250に乗っていたときに『オートバイ』誌のオーナーインタビューに答えたことがあるのを思い出す。このときは、自分が電話取材で答えた内容が「〜だし、〜も〜だし、もう大満足デス!」みたいに編集されてすごく恥ずかしかったのを憶えている。嬉しそうにマシンと一緒に写っている写真まで載っていたが、未だにこの号を後生大事に持っている友人がいて腹立たしい限りである。


アンケートはかなりのボリュームがあり、購入時の比較対象や決定理由、満足度、使用頻度などのよくある設問が続いているが、興味深いところでは、デザインからパフォーマンスまで、ヤマハのYZF-R6とカワサキのZX-6Rと比べてどうか、と真っ向から訊いている設問がある。
実際に試乗比較したわけではないので、自分がショーなどで跨がった印象と雑誌等のレビューを思い起こしながら答えていくが、オーナーの性でCBRびいきな回答選択が多くなってしまう。自分が走っているわけでもないのに、03シーズンのST600においてランキングの上位3位をCBR勢が独占していることなどが回答に影響を与えてしまい、我ながらおかしい。
とはいえ、こうして自分の乗っているマシンのことで素直に胸を張れるというのは実は初めての体験である。これまではどこかイジケ気味というか、普通の人が見たらネガティブな面を「それが魅力なんだい!」と主張しなければならないようなマシンばかり乗り継いでいたので、そうした否定的な要素がないというのは不思議な感覚だ。
例えば、スズキのディーラーでは「ウチはどうしてかこういうマシンを発売(だ)してくるんだよなあ、わかんねえよなあ」といった風に店主がマシンや自社のことを自嘲気味に話すことが多かった。またハーレーのディーラーでは、自社のバイクを貶しこそしないものの、その問題点や故障の具合などを「笑い話」のように話すのはよくあることだった(『ヘッド開けたら振動対策に藁が入ってたんですよ、ハハハ』とか。笑い話じゃないと思うが)。ロイヤルエンフィールドに至っては、ネガティブもポジティブもない。納車当日にエンジンがかからないのだから。
こうした環境に慣れていた僕にとって、自社製品を自信を持って推してくるホンダのディーラーは一種の衝撃だった。ある系列店にぶらりと行った時は、CBR954RRの純正フルエキとパーツメーカーのリプレイス品を持ち比べさせられ、「天下のホンダが本気で軽く作ってるんです、ショップがそうそう簡単に凌駕できるものじゃない」と言われ、その自信満々ぶりにすっかり面食らってしまったものだ。
考えてみたら、これって普通である。不完全だったり劣っている事を“味がある”としてもてはやすのって実は変なんじゃないか…と考え始め、完成度の高いホンダ車への傾倒を深め始めたのも、これがきっかけだった。

そうして600RRを一通り評価すると、施しているカスタマイズの内容等に関する設問、さらに議論かまびすしい国内馬力規制についての質問(『あなたはお持ちのCBR600RRを輸出仕様並にパワーアップしたいと思いますか?』とか)があり、何かにつけホンダが最高出力の自主規制をとりやめようとしているという噂を実感させる。
国内仕様購入→ショップでそのままフルパワー化、という図式が公然のサービスになっている以上、馬力規制は確かに意味がない。輸出仕様と一口に言っても相手先各国によって細かく仕様が違うらしいので、日本でも見た目に分かり易い最高出力規制などせずに、フルパワーだがカムだけ多少中低速に振ったものにする(つまり現在の国内セミフル仕様に近い)とか、ギア比やファイナルの丁数でパワーの「出方」を調整する方が理に適っているし、ユーザーも後から変更しやすいのではないだろうか。
最後には、「600ccという排気量をどう思うか」とか「600ccスーパースポーツはどうあるべきと思うか」など、このクラスの市場をさぐろうとしている気配も窺える。RCVレプリカが今これしかないとはいえ、こんなマイナーな排気量にこれほどユーザーが集まるのはヘンだ、と常々思っている僕としては、「600はシリアスなスポーツ排気量だよ、汎用性ならリッターだよ」という方向に持っていってもらったほうがユーザーが変に迷わなくていいと思う。
記入項目は100個所近くあり、終わった頃にはけっこう疲れてしまったが、結局自分が600RRにほとんど不満がないことに気づくアンケートだった。ポジションのきつさ、街乗りのしにくさ、積載性のなさなど600RRのネガティブ面の多くは、目指すべきディメンションや走りの性能を実現するための交換条件として、自分の中でむしろ「良い点」に分類されてしまっているので始末が悪い。
殺伐さこそレーサーレプリカの証、というわけである。