バロス!

Jet2004-01-06

妻の足取りが軽い。台所をあちこちと動き回る様は、まるで春のひな鳥が踊っているかのようだ。時折「バロ〜♪バロー♪」というような鼻歌を歌ったかと思うと、こちらには聞こえないリズムに合わせて軽くタップを踏んでいる。
これは、別に僕が花を贈ったわけでも、新しいハンドバッグをあげたからでも、栄進して給料が倍になると言ったからでもない。ましてや彼女のネジがとんだわけではない。「トーチュウの記事からすると、どうやら本当にノリックが復帰し、バロスがレプソルに来るらしい」と僕が言ったからである。
妻は本当にアレックス・バロスが好きである。きっかけは2002年の鈴鹿8耐だ。加賀山就臣の乗るGSX-R1000エンジンブローでリタイアしてからと言うもの、Cスタンドでふて寝をはじめた彼女は、終盤1時間になって雨が降り出し各車がペースダウンする中、迫り来る闇の中で一人逆にタイムを上げ続けたバロスの迫力にノックアウトされてしまったらしいのだ。
バロスはいぶし銀の魅力があるとはいえ、女性ファンの嬌声を集めると言った面相じゃない。むしろ、自分が一人で店番している深夜のコンビニに入ってきたら、思わず防犯ブザーと封を切っていない五百円玉のスティックに手を伸ばしてしまうくらい人相は悪い。でも妻はちゃんとニッキー・ヘイデンも好きなので、あまり顔がどうこうとかいうわけではないのだろう。
レプソルのシートがひとつ空席と言う驚くべき状態のまま年が明け、いよいよ各社から正式発表がありそうな雰囲気になってきた。ノリック復帰の噂の元凶であったジャーナリストの遠藤智氏は、トーチュウの有料記事「飛び魚日記」の中で「世界でノリック復帰、バロスホンダと言い続けているのは自分だけになってしまった」と書いていたが、文面からは自分のソースに基づいて信ずるところを書いているという明らかな自信が読み取れた*1
報道の真偽はともかく、彼の言うように11月末以来ヤマハもホンダもそれぞれのライダーも、何一つ公式発表を行なってはいない。バロスが来るらしい、いやアルタディスに違約金が払えないらしいなどと勝手に事実らしく語っているのは周辺のマスコミやファンなのである。それはそれでストーブリーグの楽しみなのだから大いにやればいいのだが、まあそこまで遠藤氏が言うのだから移籍の件は本当なのだろうな、というよりそうなったほうが面白いな、などと思っていた。
そうした中で、ライダーの公式サイトに書かれたことは一つの公の基準になる。去就を一番発表したいのはライダー本人だろうし、それが書かれたということは事態が「言ってもよし」という段階になったのだろうからだ。だから、トーチュウで再び「ノリック復帰、バロスがレプソルへ」と報じられた時も、同時にノリックの公式サイトhttp://www.norickabe.com/で復帰が語られたため、これは間違いないよ、と妻に話したのである。同サイトによれば、まだチームなど詳しいことは月末になるまで報告できないものの、04シーズンのMotoGPにフル参戦で復帰することは確実だとのことだ。全盛期である90年代中盤の走りを直に観ていない僕としては*2、彼が4ストマシンに跨がりハンデのない土俵で戦うのを目にするのが実に楽しみではある。
一方バロスだが、こちらはまだ何の発表もない。でもWCMに移籍などの大どんでん返しが起こらない限り(笑。笑っちゃいかんな)、ノリックはアルタディス傘下のどちらかのチームに行くのだろう。だとすればバロスの行き先はおのずと決まってくるはずだ。怪我の具合が心配だが、去年あれだけ転んだのは前輪の接地感に不安を抱えるといわれるYZR-M1が、彼の乗り方にあっていなかっただけかもしれない。いずれにせよ、初乗りのRCVでロッシ相手に2勝した実力がこの1年で鈍っていないことを祈っているファンは多いはずだ。
青木宣篤プロトンKR残留が発表され、海外のカワサキサイトによって中野の移籍も裏付けられたようだ。一時はどうなることかと思われた日本人ライダー層も、玉田を入れてこれで4人。まあちょうど良い数なのではないだろうか。
来週には各メーカーのテストが解禁され、にわかに騒がしくなるに違いない。せっかくオフシーズン料金も払っているのだから、MotoGP公式サイトでテスト映像をばんばん観なくては損である。
で、宇川復帰はやはりなしか…。とあたりまえのようなちょっと落胆するような*3

*1:「飛び魚日記」03年12月24日分より

*2:96年の鈴鹿でのレースビデオをMotoGP公式サイトのアーカイブで見たことはある。すでに過去のレースながら、ノリックの攻め方には鳥肌が立つほど感動してしまったものだ。あの走りをリアルタイムで見た人なら、今でもチャンプの夢を彼に託すのもわかる気がする

*3:一部ではJSB1000の話もあると言うが、どうなのだろう。JSBのホンダ勢は有力なライダーを少しでも多く欲しいだろうし、ホンダ自身も新型CBRを少しでも熟成させたいだろうから、RCVの経験を持つ宇川はぴったりかもしれない。それに、彼は走ればぶっちぎり優勝だろう。HRCからどこかのチームに貸与という形になるのだろうか。