フェデリコ・ミノーリからの手紙

Jet2003-12-17

僕の使っているメールソフトには、迷惑メールをそれと判断して自動的に捨ててくれる機能がある。これはこれで大変重宝しているのだが、やはり万が一と言うこともあり、「迷惑メールボックス」に捨てられたメールは一週間ほど保存し、時折開けて中を見る。重要なメールが勝手に迷惑メールに分類されていないかチェックするからだ。
そんなある日、そうした迷惑メールの数々を確認していると、タイトルに「Ducati」の文字を発見。おいおい、これは違うよ、と開いて読んでみると、以前回答したドゥカティの「Sports Classic」シリーズのアンケートに対するお礼の返事だった。署名はドゥカティのCEO、フェデリコ・ミノーリ(苦笑)。
先日の東京モーターショードゥカティが発表したDSエンジンのスポーツクラシックシリーズが驚嘆をもって迎えられたのは記憶に新しい。僕はそのモーターショーで実物を見るに先立って、ドゥカティジャパン公式サイトhttp://www.ducati.com/od/ducatijapan/jp/で行われていたアンケートに答えたのだけれど、そのお礼のメールというわけだ。
一台一台にまつわる長々としたアンケートにちまちまと答えたのは、応募者の中から先着でこれらスポーツクラシックシリーズのカタログがもらえると聞いたからだが、このメールではそのことは触れられていない。このメールが「はずれ」のお知らせというわけでもなさそうだ。あんな長ったらしいアンケートに国内で3000人も答えるとは思えないからたぶんカタログはもらえるだろうと踏んでいたのだが、どうなのだろう。
件のメールには、これら3台のバイクはまだ夢に過ぎない、と書いてある。しかし、ドゥカティは時として夢を現実にする会社でもある、と思わせぶりなことも書いてある。実際これらのシリーズが市販化されるのは間違いないとの下馬評だから、あとは次期がいつになるかと言うのが気になるところだろう。そして、3台のうちどれが実車としてお目見えすることになるか、というのも。
アンケートに何を書いたか詳しくは憶えていないが、僕は球形の大型カウルを配した「ポールスマート1000」を一番高く評価した記憶がある。かつてはシングルや空冷ツインが好きで、でも遅いのは(少なくともシングルや空冷を理由に速さに背を向けるのは)我慢ならないと考えていた僕にとって、ロケットカウルを装備したやる気満々スタイルのPS1000はまさにツボに来るデザインだ。もしSUZUKI GS1200ssによって現行スポーツバイクの世界に足を踏み入れていない数年前だったら、間違いなく今ごろドゥカティのディーラーで予約の書類にハンコをついていただろう(笑)。
とはいえ、今回の3モデルの中で一番バランスがとれていて格好良いと思うのはPSではなく「スポルト」である。“セパハン”というなつかしい言葉が似合いそうな低く構えたクリップオンハンドルに、レーシングストライプの入った鮮やかな黄色いタンクが目を惹く。そしてきわめつけは、ハンドルバー末端から変則的な形で伸びたクラシカルなミラーステーである。これこそカスタム・カフェレーサーだ。
ライディングをひとつのスポーツとしてとらえ、バイクはそのための道具、ウェアはそのための専用ユニフォームと割り切っている今だけれど、やはり自分のCBR600RRとライディングスーツで都心に出たり、人と待ち合わせする気にはならないのがちょっと不満だ。用足しにさっとまたがり、都心に停めて降り立っても様になるようなバイクライフはずいぶん遠くなってしまったなあ、と思うこともしばしば。そんな時にこそ、こうした一台があればベストなんだけれど、と夢想してしまう。
『RIDERS CLUB』誌1月号の特集によれば、意外なことにドゥカティのプロたるディーラーやショップの人たちの間で最も評価が高いのは、比較的地味なツアラー仕様「GT」のようだ。確かにGTはそのまま街に出してもどこかの市販車と思われそうな完成されたデザインで、それと比べると他の2台は「とんがって」いる分どこか不自然さもある。しかしそれは逆に言えば、今のバイクにないコンセプトをはっきり主張していることに他ならない。ポールスマートやスポルトがお蔵入りになったとしたら、ちょっとというかかなり残念な話だ。
ツーリング仲間である友人の89年型900SSに乗らせてもらうたびに「帰ったらドゥカティのディーラーに行こう」と思ってしまうくらいだから*1、僕もドゥカティの空冷にはとても興味がある。実際、600RRに乗ることで失われた「鼓動感」や「流す楽しみ」とスポーツライディングを結びつけられる数少ない選択肢なのではないか、と感じることもある。何よりも、今DS1000エンジンの新車が欲しいと思った時に、好き嫌いのはっきり別れるテルブランチのSS900しかないのはなんとも息詰まる話だよなあ、と感じていただけに、このラインナップが加わるのはテルブランチデザインに抵抗感を感じてドゥカティに手を出しあぐねていたライダーたちにとって、かなりの呼び水になるんじゃないだろうか。
とはいえ、一番気になるのはその値段だ。アンケートにも価格設定を聞く欄があり、僕は「エンジンは流用だし、でも外装はスペシャルだし、コストパフォーマンスのおばけたる日本車よりちょっと高めにしないと失礼かな」などと悩んだ揚げ句140万ほどと書き込んだ記憶があるが、実際のドゥカティ乗りにとってはこの値段、高いんだろうか安いんだろうか。

*1:実際ツーリングから帰るなりオープンしたてのドゥカティ東京ウエストへ出かけたこともある。時間が遅かったので試乗はできなかったからいいようなものの、実際に乗っていたらどうなっていたかわからない。新古車の良い出物も見せられて……あぶないあぶない