デ・ロリアン

Jet2003-12-25

先日の日記で書いたカーモデル専門店に行ってからというもの、なんだか「ミニチュア欲」とでも言うものが収まらない。こういうのって波があるのだが、別に買いまくりたい訳ではなくて何か一つ関連するものが手元にあれば収まってしまうようなものなのだ。無性に新しいギターが欲しくなって楽器屋に行って、結局弦を買ってなんだか満足して帰ってくるようなものである。
そうした矢先、家族のクリスマスプレゼントを選びにトイザらスへ出かけた時のことだ。全員が「ターボマン」人形*1を求めて殺到しているのではないかと錯覚するほどの混雑の中、ちょっと大型の玩具店ではおなじみ、SunStar社のカーモデルがずらりと並んでいるのを発見し、するすると男魂の呼ぶままに吸い寄せられる。
いつも「見てるだけ〜」で買いはしないのが常だが、その中に自分が長らく探し求めていたものを見つけてしまったのである。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』第1部に出てくるタイムマシン、デロリアンの1/18モデルである。
中学3年生の時にこの映画を観て夢中になって以来、その熱狂は今でも変わっていない。この映画は80年代最高のシナリオであるといまでも思っている。そして、劇中で機器類むき出しのサイバーな姿をさらすデロリアンは、こうした映画の中のSF小物(『ゴースト・バスターズ』のメンバーがしょってる機械とか)にめっぽう弱かった当時の僕のハートをがっちりつかんで離さなかったのである。
実はデロリアンがSunstar社から出ているのは以前から知ってはいた。しかし、それは第1部のラストから第3部にかけて出てきた改良型(完成型)デロリアンであったのだ。しかし僕はこのタイプが好きではない。時速88マイル、1.21ジゴワットの電流を必要とする不完全さこそが僕にとっての魅力であり、ゴミを動力源としてあまつさえ空を飛ぶなど、簡単すぎて面白くないと思ったものだ(まあそれでは以後のドラマが面倒くさくなって仕方ないけれど)。
そこで何度も手が出そうになるのを「時計台バージョンが出るまでは…」と我慢していた矢先、同じSunStarから1/24というディスプレイバージョンで第1部仕様が出ているのを発見。「これが出ているならいつかは1/18が…」と思っていて、先日のGETでもこっそりと探してはいたのである。
そこへきてついに、ついに発見!……となれば即買いというのが常道だけれど、あいにく時は年末。給与振込日が普通のサラリーマンと違う仕事の性質上、月末、特に年末ともなれば台所事情は極限まで厳しくなる。ここで出す4000円が明日の我が首を絞めることにならないとも限らない。見るところ在庫は潤沢にあるし、いつでも手に入るとなればまたここへ足を向けた時でいいのではないか……と泣く泣く棚に戻しかけたデロリアンを、妻がひったくってカゴに入れてしまった。「欲しい時に買え」というのが信条の妻は、こういうとき実に気っぷが良い。しかも聞けば僕へのクリスマスプレゼントに買ってくれるというではないか!おお、この心地よい風よ、僕を天高くまで運んでおくれ!この歓びを僕が雷で表していたら、トイザらス一帯は大きなクレーターの中に消えてしまっただろう。
ともあれ、クリスマスがきて僕は意気揚々とデロリアンを箱から出した。実際に見てみると、ため息が出るほど出来が良い。表面は実車のステンレス外装*2とみまごうばかりの見事な処理で、ヘアラインもきちんと入っている。外装を覆うパーツ、リアのエンジン部にかぶさる怪しげな機器の数々、シートの背後にある三叉の次元転移装置まですべて再現してある。湾曲して宙に浮くケーブルも中抜きをきちんとしてあり、どの角度から眺めても妥協がない。以前アオシマから発売されていたプラモデルを買おうと思ったが、このサイドパネルを這う複雑なパイピングを塗装する自信がなく断念したのを思い出し、本当に長年待って良かったと感慨にふける。
さらには劇中で時計台に落ちるカミナリから電源を取るためのワイヤーもきちんと添えてあり、それを装着すればもはや完璧な第一作仕様。映画の一瞬一瞬、次元転移の時に焔を上げる両輪の軌跡や、突っ込んだ暗い納屋の中でライトだけが静かに灯いている姿、初登場の時にカチンカチンに凍りついたボディから水蒸気の煙を上げていた様子などがよぎり、すっかり子供に戻った気分である。
こうしたモデルが机の上に置いてあるだけで、そこが何か胸躍る場所になったような気がするから不思議である。僕にはもう一つ、出てしまったら即買いするほどほれ込んでいる架空の車がある。それはティム・バートン版の『バットマン』1作目に出てきたバットモービルだ。これがこのSunSterの1/18で来たら自分を止められないなあ、と思っていたら、ここは実車をベースにしたものしか作らないらしい。デロリアンもこれとは別に正規の自動車版(しかも81年に2台だけ生産された純金製ボディ!)があるし、バットモービルもテレビ版の50年代コミック版を出している。
…と思ったらマテル社から1/18の完璧なモデルが出ているのを見つけてしまった。
http://www.ne.jp/asahi/star/hoshimiru/temp/batmobile_hw.html
まずい。これはまずい。しかも完売っぽいし…。ああ、どうしよう…。

*1:アーノルド・シュワルツェネッガーの映画『ジングル・オール・ザ・ウェイ』に出てくるTVヒーロー。超品薄状態のこの人形を求めて、シュワルツェネッガー以下大人たちが大騒動を繰り広げる。この劇中の「ターボマン人形」は実際に作られていると踏んで渡米するガールフレンド(今は妻)にまで頼んでいたりしたが、結局渋谷で見つけて即買いしたときの感動は今も忘れない。

*2:僕はずっと、デロリアンが志半ばにして生産中止になったのはこの野心あふれるステンレス製ボディのメンテナンスにコストがかかり過ぎるからだと思っていたが、最近そうではなく社長のジョン・Z・デ・ロリアンが麻薬所持容疑で逮捕され、スポンサーのロータスが引き上げたからだと知った。なんだかがっかりである。