早すぎるエントリーリスト

FIM(国際モーターサイクル連盟)から、04年の暫定エントリーリストが発表された。
ヴァレンティーノ・ロッシの移籍を端緒として、大波乱&民族大移動が起きるかと予想され、ストーブ・リーグはうわさ話でたっぷり楽しめると考えていたけれど、こうしてみると意外とほとんどのライダーがおさまるところへさっさと収まってしまったような気がする。
これに先立ち、日本人では宇川徹清成龍一が、それ以外ではギャリー・マッコイ(豪)とオリビエ・ジャック(仏)がクラスを離脱した。成績が奮わず、有力な個人スポンサーをもたない中堅ライダーが厳しい局面に立たされているのは確かだろう。そして空いたシートは引っ張られてきた「他リーグ」のチャンピオンライダーたちが埋めてしまい、これ以上の大変化は特に望めないような見通しになってしまった。
ただ一つ、レプソル・ホンダの1シートを除いては、である。
大部分のGPファンの関心は、空いたこの「玉座」に噂通りアレックス・バロスが座るかどうか、だろう。バロスの移籍はそのまま阿部典史の去就につながると噂されているだけに、日本人のファンにとっては関心もひとしおだ。しかし、この暫定リストではバロスはこれまでどおりヤマハからの参戦と記されている。
すると、いきおい最強チームの4番席ともいえるこのシートは誰のものに……?ということになるが、実はあたりを見回すと、いないのである。「人材」が。
WGPの別排気量から連れてくるのが常道だが、誰もがステップアップして当然と考えるホンダのライダーは見当たらない。他のレースを見渡せば、03年スーパーバイクチャンピオンのニール・ホジソンと2位のルーベン・チャウスはそれぞれドゥカティに収まってしまったし、WSBのワンメイク化とともに最近とみに注目が移ってきたブリティッシュスーパーバイクのチャンピオン、シェーン・バーンはアプリリアにつばをつけられた。
残るスーパースポーツにはクリス・バーミューレンとステファン・シャンボンがいる。バーミューレンはホンダ乗りだが、600CCの市販車レースからいきなりMotoGPクラスにステップアップすることについて、03シーズンの清成龍一アレックス・ホフマンの結果を見ていれば、高い期待を抱く人はそう多くないだろう。しかもそれが別世界めいたホンダのワークスマシンとあればなおさらだ。
スポンサーから考えてスペイン選手権から…とも考えられなくもないが、同選手権がどちらかというとスペイン国内のアイドルライダーのお楽しみレースと言うことを考えれば、まあ妄想の範囲だろう。ヨーロッパ選手権に関しても、今年の関口太郎の全戦全勝ぶりを見れば、そのレベルは推して知るべしである*1AMAからはすでにニッキー・ヘイデンが来ているし、シニアの息子カーティス・ロバーツはプロトンに行くとか。となると、すぐに思いつく名前も少ない。
こうなると勢いづくのが、ホンダが日本人ライダーを擁するのではないかという期待だ。しかし現在の全日本は「出戻り」とも言える中堅ライダーが勝ち続けるという、面白いがこれでいいのかというような状態で、天下のレプソル・ホンダとはあまりイメージが結びつかない。伊藤真一岡田忠之という夢のような名前があがる一方*2ノリックのホンダ移籍、原田哲也の華麗なる復活、果ては宇川徹の返り咲きまで噂されるなど、ファンの妄想はとどまるところを知らない。
いずれにせよ、この頂点の一角が埋まらない限り、どこがどのライダーを走らせようと落ち着かないのは皆同じなのではないだろうか。話によれば、まだ多くのライダーが交渉中のこの時期に、FIMがスポンサーまで入った暫定エントリーリストを公開するのは異例のことだそうだ。このせいで交渉が破談したライダーもいたそうで*3、何か現在のラインナップを「既成事実化」しようとする勢力の動きを感じるとか。とみにF1化が進むと言われるGP界でまた一つきな臭い話だが*4、とにかく残りの一席、しばし注目である(WCMは無視か!>自分)。

*1:関口のレベルが低いと言っているわけではなく、元GPライダーならガレージの片隅でバラバラになっていた中古のTZを組み立てて全勝できるクラスだという意味である(この辺の凸凹ぶりは彼の公式HPを見ると面白い)。関口自身はこの結果をぶら下げて、GPの250CCクラスに復帰を果たせるらしい

*2:結局岡田はBSBのホンダワークスチームの監督として清成を走らせるらしい

*3:トーチュウ遠藤氏の「飛び魚日記」による

*4:しかしこうして「F1化」ってのが悪い代名詞に使われるのもF1ファンの人たちにとっては気の毒な話だけれど