男の世界!カーモデルの専門店

Jet2003-12-13

友人とクルマで移動中、信号待ちをしている僕の目に、夜8時を過ぎているにも関わらずこうこうと明かりをつけた店舗が飛び込んできた。目を凝らすと何だかクルマのミニチュアばかり置いてある。看板には「カーホビー」の文字。こりゃ珍しい!僕はすかさずスキール音とともにハンドルを切り(ウソ)、その店の駐車場へとクルマを滑り込ませた。
その店、「GET」という名前で、夜11時まで開いているありがたいお店。
http://www.get-hobby.com/
入ると、見渡す限りカーモデル。数千台は軽くいくのではないかという在庫量で、自分の中の男魂(おとこだま)がめらめらと燃え上がるのを感じる。子供の時なら興奮のあまり走り出していることだろう。店主には悪いが、もちろん僕はヨツワなんぞに用はない(クルマ好きの人、失礼)。この店なら、と踏んで入ったのは、目にすることの少ない二輪のミニチュアモデルを見たかったからだ。僕はせっせと通路を移動し、バイクの棚を探す。
もちろん、棚一列程度だったとは言え、普通のホビーショップから考えれば信じられないほどの二輪モデルが置いてあった。吉祥寺ユザワヤなどでも少しは見ることの出来るMinichampsの1/12スケールモデルを中心に、値段が手ごろなNewray、日本人ライダーモデルまで細かく出してくれるが1/24のクセにすごく高いixo、1/6というビッグサイズで楽しいが出来は超大味というGuiloy*1まで各種揃っていてかなり満足である。まず見ることのなかったミニチャンプス製ドゥカティの1/6ワークスマシンや、ニューレイが出した1/6のデスモセディチ(これがまたぜんぜん似てない!)など、珍しいものもしっかり置いてある。
そしてそのど真ん中でひときわ目を引くのが、この店に来た裏の目的であるタミヤの1/12完成品「マスターワークコレクション」RC211V #46ロッシ車だ。
http://www.tamiya.com/japan/products/21001repsol/index.htm
7月に発売すると言われてから延期につぐ延期で先日やっと発売され、初めて店頭に並んでいるのを目にする感動もさることながら、激しい葛藤にしばし立ち尽くす。普通ならそのまま箱をひっつかんでレジへ向かうところだが、僕にはそうできない理由があった。2003年2月、僕は発売日を待っていそいそとこのタミヤ製RC211Vのプラモデルを購入した一人なのである。
気合いを入れて道具や塗料を全て揃え、せっせとエンジンまで組み立て、細かい作業のできない自分を律しようと直径0.5ミリにも満たないビスまで気合いを入れてしっかり塗装したまではいいが、哀しいかな、そこで春がやってきた。当然僕は本物のバイクに走ってしまい、タミヤのRCVは棚に箱ごと眠り続ける羽目になった。それを横目で見ながら後ろめたい日々を過ごしている中でマスターワークコレクションの発表、それに衝撃を受けている間もなく今度は03型テレフォニカ・モビスター仕様の発売、そして追い討ちをかけるようにキャメル仕様まで出てしまった。
レプソルを完成させるまではと新発売の03型二種にも手を出し渋っているくらいなのに、こんな完成品を買ったら完全に負けである。出来の違いすぎる#46と並べることができないので、ジベルナウ車や宇川車を自分で作ることも気が引けてしまうだろう。……つまり、一念発起した僕のプラモデル作りは完全に挫折してしまうことになるのである!
……と思って泣く泣くマスターワークモデルを棚に戻す。それにしても見れば見るほど出来が良い。同じくらいの値段をとるミニチャンプスと比べても雲泥の差だ。ミニチャンプスは遠目に眺めると出来がいいのだが、細部に目を凝らすと詰めの甘さを突っ込みたくなる。エッジの立った削り出し感がいかにもなはずのブレンボのレーシングキャリパーがまったりとゆるい造形だったりして、全体はいいのにどこか「ここを押さえておいて欲しい」という部分が抜けているのである。
思えば、ミニチャンプスの収集に走れないのも、タミヤのモデルを自分で作った方がはるかにコストパフォーマンスがいいと感じたからだ。自分に課したこの課題が、これだけ魅力的な店においてもなお自らを縛り続ける。いいことなのか、悪いことなのか(笑)。
数日後、ちょっと未練があってこの店にまた寄ってみた。一個しかなかったマスターワークコレクションは、当然のように棚からその姿を消していたのだった。

*1:ここはNSR500の塗装だけ変えてRC211Vだといって売るすごいところである。たぶん本国では子供向けのメーカーなんだろうと思う