タブレットPC

多事多端、見た目バタついてはいないのに時間が全くない。書きたいことは溜まれど気がつけば月日が流れてしまう(バイクはちゃっかり乗ってるんですがね)。
ここらでちょっとペースの作り直しに、バイクとは無関係な話でもまぎれさせて復活の端緒としよう。


数時間子育てから解放されるという僥倖を得て、ほんとうに数年ぶりに妻と映画を見に行った。地方都市で巾をきかすワーナー系のシネコンなので、僕が迷わず選んだのはコラテラル
男の詩情の世界と都会の風景ををミックスさせたらピカイチのマイケル・マンの世界は、『マイアミ・バイス』の頃から少しも変わっていない。東海岸的にスタイリッシュなロサンゼルスの夜景と、びしりと決まった主人公のダブル・ハンデッド・ホールドのシューティング・スタイルは、彼の真骨頂。ついでに口径を無視した主人公のバカでかい銃の発射音も健在だ(笑)。
作品そのものは、シンプルだが情緒溢れるプロットと、ジェイミー・フォックスの好演がよくバランスした良作というべきだろう。大仰なロマンティシズム(オオカミだって?)と唐突にも感じる終わり方が好きになれるかどうかは、リドリー・スコットの換気扇が許せるかどうかと同じく、正面切ってマイケル・マン流を受け入れるかどうか次第だ。
遠くなった昔、ガンマニアを自任していた頃は、例え目の隅で見ていても映画を見終わるとほぼ全ての人物の所持銃器を言えたものだ(笑)。映画の後、そのキャラクターに対してその銃を持たせたことがキャラ作りの上で正しいかどうかまで議論するのもザラだった(ああバカな青春時代)。
しかし今となっては、見終わって記憶を振り返っても「う〜んトム・クルーズの銃はS&Wの6シリーズだったかな〜」くらいしか思い出せない。それすら全く違うかもしれない。
ストーリーのダイナミズムにディテイルはあまり関係ないと気づいて以降、リボルバーを6発以上撃ったり、オートマチックがホールド・オープンしなかったり、オープン・ボルト方式のはずのマシンガンのコックを戻す音がしたりしない限りは、映画の中の銃なんてなんにも心に引っ掛からなくなってしまった。それはそれで、少し寂しい気はするのだが。

それにしても『コラテラル』のガジェットの中で印象的だったのは、殺し屋であるトム・クルーズがターゲットの情報をPCで──しかもタブレットPCで管理していることだ。カバンの中から無造作にタブレットを取り出し、スタイラス・ペンですらすらと操作しながら殺しの対象者を呼び出していく様は、ちょっと新しい。
さらに、ジェイミー・フォックスのタクシーのメーターパネルも同じタブレットPCをマウントしたもので(後にトム・クルーズが引きちぎって使うことからわかる)、これはなるべく新しいガジェットを使いたいという演出なのか、それともマイクロソフトのプロモーションの一環なのか*1
時代の流れを感じると言えば、映画の中盤で殺しを依頼した組織が渡すデータのメディアも、なんとUSBメモリーだ。パソコンなんてとてもいじれなそうな組織のボスがスティックメモリにさらりとデータをロードし、キャップをしてポンと渡す。それをトム・クルーズタブレットPCの側面にあるUSBポートに挿して、涼しい顔でデータをコピーする──。
いやはや、MOが登場した時は「スパイの使うディスクみたい!」と感動したものだが、そうした光学ディスクさえもはや時代遅れだ。スパイや殺し屋の世界も時代の流れについていかなければならないというわけだ。
そういえばこのタブレットPC、日本での売れ行きやプロモーションは今一つのようだが、僕はひっそり応援している。今年の初頭に秋葉原で友人と会ったついでにラオックスで探し回ったこともあるのだが、ついぞお目にかかれなかった。
いったいコレ、どこで売っているのだろうか?使いこなすと結構カッコいいと思うんだけど。

*1:タブレットPCを失ったトム・クルーズが組織のボスの居所をノキアPDA型携帯電話で調べていたりしたところを見ると、たぶん総じてこうした電子機器を使いこなすという演出なんだろう