バイクカバー奮発

Jet2004-03-11

もう限界だ
埃混じりの強風と風雨に晒されたので、また外装でも掃除しようとCBRを引っ張り出す。オフシーズンは盆栽先生よろしく磨いて過ごすのもアリだ!──と割り切ってはいたものの、最初は愛着の発露だった外装磨きもこう続くと全く面白くなくなってくる。しかも、洗うついでにボディを子細に検分していたりすると余計なことに気づいたりするから質が悪い。サイドカウルのエッジの一部が塗装はげのような症状になりかけているのに気がついたのだ。いつも風にはためいている古いバイクカバーが原因に違いない。
だからこういう物質愛的な付き合い方をするのは気が進まないんだ──と自分に悪態をつく。乗り回していれば気にならずむしろ愛着の一部となるような経年変化も、ただ磨いているばかりだと本体がまるで“キズモノ”になったような心地の悪さを覚える。バイクはやはりライディングすることで充実感を与えてくれる道具であり、眺めて過ごす宝石や壺とは違うのだから(まあMVアグスタだったら別だな)、あんまりこういう気分にとらわれたくはない。
とはいえ、実はカバーの買い替えはここ数ヶ月ずっと気にしていたことではあったのだ。いつもバイクを買い替えると儀式のように新しいカバーにしていたのだが、600RRは納車のときから長雨の冷夏に祟られ、以来きっかけを逃してここまできてしまった。今のカバーはGS1200ssの時から引き続き使用しているため、ヤれて黒ずみ、一部かぎ裂きのように破けた個所すら見受けられる。
使用感のあるカバーは目立たず盗難抑止になるとは聞くが、すっかりヨれた状態はみすぼらしい上にバイクに申し訳ない(僕の中ではプラスティック・バイクの最たるCBRだってアグスタに負けないくらいの“宝石”なのだ)。これをきっかけにと、僕はライコランド多摩店へ向かった。


“ベストバイ”はワイズギア製
実は店のセールの度に何度もカバーを買おうとしては、他のものに予算を取られていた。高いものじゃないんだからさっと買えばいいのにと思うが、カバー風情にここまで金を出し渋ってきたのには訳がある。次に買おうと画策していたのはワイズギアの「Fタイプ・バイクカバー」というヤツだったからだ。
http://www.ysgear.co.jp/e-shop/index.html
平均的に実売5000円弱くらいのカバー界(?)にあって、ひときわ高級なテクナロンバイクカバー*1を除けば量販店クラスではこれが最も値が張り、実売で1万近い。
このFタイプの最大の特徴は両わきに緑の「えら」がついていて、その奥がベンチレーション用のメッシュになっていることだ。これで、カバー内部に湿気が溜まり様々な悪影響に繋がるのを防いでくれるので、梅雨時などにしばらく乗れなくても少しは気が楽だ。難燃性素材で放火対策もしてある。また、これまでは前後がすぐ判別できないカバーを使って苦労していたので、フロント側の生地が緑になっていてはっきり方向がわかるのもありがたい。しかし僕がこれを選んだ最大の理由は、その「ドローコード」にある。
一般的なカバーは被せた後で裾に付いているバンドをボディ下に通して結び、風によるバタつきを抑えるようになっている。しかしこの「バンド」がくせ者で、地面に這いつくばってオス側のクリップがついたバンド先端を反対のメス側に引き寄せるのは至難の業だ。
仕方ないので車体の下からオス側をえいとほうり投げ、反対側に廻ってそれを回収するようなことになるが、風の強い日だとメス側に廻った時にはすでに風でクリップが吹き戻されていて、ひどいとクリップがつかまるまでバイクの周りをよろよろと何度も往復する羽目になる。
このせいで手も真っ黒になる上に、僕がCBRを置いてあるすぐ脇には立て看板が立っていて、やっとバンドを結んでやれやれと立ち上がるとその鋭利な角にしこたま頭をぶつけることになる。一度はライディングスーツの肩を割きかけた時もある。
……とまあ、いまいましい裾結びバンドがもたらすこのあらゆる苦難から逃れようと、バンド形式でなくカバーの裾にぐるりと回したドローコードを引っ張って裾を引き絞るタイプに変えたい!というのが買替えの最大の動機だったのだ。
ドローコード形式なら他社からも出ているが、このFタイプはさらに一歩進んでいる。ボディ中央──丁度タンクとシートの境あたりにもう一つ縦にコードが這わせてあり、これを上から絞ることでさらにカバーと車体を密着させることができるのだ。バタつきやシート上への猫の侵入を完全に抑えるために、同じような個所に布団縛り用のバンドなどを通してぐるりと結んでおく人をたまに見かけるが、これは一切地面を這いずることなくそれができてしまうのである!

装着完了!…でも所詮カバーだよね
というわけで足をがくがくさせながらそのカバーを買い(だって、そこらのメンテナンススタンドより高価なくらいなのだ)、さっそく装着。ワイズギアのみが「カウルミラー用」というレーサーレプリカタイプに対応したサイズを謳っているのでそれを選んだが、確かに通常のものよりもミラーの収まりが良い。とはいえ昨今のトレンドでコンパクトなカウルデザインの600RRのこと、フロントシールドを包む部分はスカスカで、カバーもちょっと所在なげだ。
全てのコードをしっかり絞ると、たしかにほとんどバタつきがない。僕の駐輪場所はかなりの吹きさらしで、強風の時はそのままバイクごと舞い上がるんじゃないかと思うくらいカバーが風をはらんでいたりしたので、これで一安心である。引っ張って長く伸びたコードは本体についたベルクロで束ねておけるのも気が利いている。
それにしても、いかにも新品で強い折り目のついたカバーはやっぱり気恥ずかしい。早く一雨か二雨降って、少しなじませてくれないかな、などと思う。目立って窃盗団などに“目をつけられる”のも心配だ。しかし、振動アラームにイモビライザー2種(オプションとHISS)、フロントとリアのロックにディスクロックまでかけてカバーもしてある上で盗まれたら、それはそれで縁のなかったことよ、とは思うけれど。
急に暖かくなってきて、いよいよシーズンインも秒読みか?という空気になってきた。カバー新調もいいけれど、走りで盛り上がる季節を一刻も早く迎えたいなあ、と思いながら駐輪場所を後にするのであった。

*1:平山産業製。4層構造で完全な透湿防水、紫外線カット、柔らかい繊維でボディに優しく、高強度という最高級カバー。実はかぶせると裏地の青い繊維がボディにびっしりついてしまい意味なし、というレビューもみかけるが、実際どうなのか