天城高原

Jet2003-11-23

今度こそ今年最後の伊豆箱根、と勇んで出かけるが、連休の中日を甘くみていたようだ。朝6時台にもかかわらず東名は途中何ヶ所か渋滞しているし、いつもなら大井松田を過ぎた右分岐を「とんでもなく」飛ばすのを楽しむのだが(もちろん他のクルマがほとんどいない時です)、今日はそれもままならない。
箱根スカイラインでは運悪く出くわした2台のパンダに先導されてパレード、続く芦ノ湖スカイラインはこんな時間からすでにクルマ天国となっていて、野太い排気音を響かせながらポルシェやらRX-7やらがぶんぶん走り回っている。後ろからランエボに圧され、道を譲ったあたりですっかり気力減衰モード。カプチーノにちぎられて我に返り(相当改造しているんだろうけれど)、目を三角にして追いかけている間もなくみんな仲良く一般車につっかかってノロノロ
これはどうもヘンだ。ひょっとして僕は失敗したんじゃなかろうか?考えてみれば連休の中日、快晴、紅葉シーズンラスト、もう来週末は12月ってことで、みんな気合いを入れて「秋の行楽」に乗り込んできているのだろうか。
伊豆スカイラインでは一般車の列に観光バスまで何台もつらなっていて、もう半分あきらめ状態だ。開ければ加速、閉じればエンブレという600RRにとって、最も厳しい走り方となる50Km前後定速走行を強いられているうちに、いつのまにか天城高原まで着いてしまった。
料金所を抜けて右折し、これまでに比べると格段にタイトなワインディングを天城高原へと向かう。ここは遠笠山をかすめながら天城高原ゴルフクラブへと続くどんづまりの道で、途中にはベゴニアガーデン*1とちょっとした喫茶店くらいしかないため、クルマもバイクもまずほとんど通らない。そのかわりセンターラインもないので対向車には注意が必要だが、タイトな急坂のため比較的低い速度域ですぱっとリーンを決められる場所でもある。どこか走り慣れた奥多摩を思わせて好きな道だ。
そして5分も走れば天城高原GCの入り口にたどり着き、そこで行き止まりだ。以前伊豆スカイラインで遊び始めた時は、ここですっかり行き場を失って以後のルートの設定に困ったものだったけれど、今ではここが一つの目的地になってしまっている。GCの入り口傍には駐車場なのか転回用なのか、砂利と芝の入り交じった広いスペースがある。ここにバイクを止め、ウェアを脱いで体を伸ばし、しばしのんびりする。本当に人っ子一人通らないので、ゆっくり工具を広げてバイクの各所をいじるともなくチェックしたり、時には芝の上で少し仮眠したり、ココだけの話、林の中で生理現象に対応することも可能だ(笑)。
寝そべれば、見えるのは三方の木立の向こうにぽっかりと穴のように見える空だけ。しんとした中に鳥のさえずりと、遠くを飛ぶ飛行機の音がかすかに聞こえるくらいだ。人気はないが、木々の向こうに目を凝らすと時折ぽつぽつと移動するゴルファーの小さな姿が見える。ここでこれまでの走りを振り返って考え、帰りのルートでのコーナリングの組立をシミュレートする。
……というのがこれまでの天城高原リラックス計画だけれど、さすがに今日はそうはいかなかった。なんといっても寒くて、芝生の上でごろりという雰囲気じゃない。周りの木々もだんだん葉を落としてきていて、芝の色も寒々しく褪せている。ここじゃコーヒー一杯も飲めないのが、今日は恨めしい。
こりゃあ本当に今シーズンは終わりだな、と首を振って帰途につく。帰りにファミリーパーク辺りから出てきた観光バスを皮切りに、途中の伊豆スカイラインでもひたすら次々現れる同じようなバスをパスするのに腐心して、ライディングどころじゃない。多少無謀なことをしてでも観光バスは抜かないと、臭くて甘ったるいディーゼルの黒煙を真正面から浴びせられ続けて息も出来ない。事故以前にこのまま毒死しそうだ。
結局ろくに走れないまま伊豆スカを出る。どちらにしても今日はまったく乗れていず、前回後半の調子の良さはどこへやらだ。帰路いろいろ考えた揚げ句「次の問題点はブレーキングだ」という結論に達する。コーナリングの組立のためには、リリースポイントに向けた確実で安心感のもてる減速が必要だ。でないとまたエンブレに頼ってメリハリなく減速するクセが出てしまう。「二段がけ」とか「遠くから引き込むように」とやってはいるつもりだが、冷静に分析すると意外と「だらだらと」かけてしまっていて、それが不安定な制動力を呼ぶのかもしれない。レバーを引き込む動作も、思っているよりもっと力を込めてしっかり操作しなければならないのだろう。
帰りは道志のつもりだったが、疲れ果てて高速を使ってさっさと戻ることにする。大観山のてっぺんからターンパイク、小田厚、東名川崎までずっと下り線にクルマが連なっているのを横目に見ながら、こりゃあブレーキングの件もあるし、空いている平日になんとかもう一度リベンジを…と考えている自分がいるのだった。どこが今年最後だ(笑)。

*1:いつも天城高原の料金所でおじさんが立っていて、ここのチケットを渡して「すぐですから」と勧めてくれる。ごついウェアに身を包んでしかもソロのライダーがブーツをごつごついわせながら花を見るわけないじゃん、もしそうしたらそれはそれで怖いぞと思いながら受け取るのだが、よく利用させてもらっている観光地に金を落とさないのはあいかわらず後ろめたい。そのうちクルマで来ることがあれば一度寄ってみるから、といつも心の中で言い訳するのである。